拝啓　明美へ

元気にしてますか？
今はきっと、夏休み中だよね。どこか遊びにいったりしてますか？

私の方は、異世界にバカンス…とは程遠い日々を過ごしてるよ。

私の話はいいとして、皆で色々休み前に遊びに行く計画してたよね。

海とか花火とか、プールとか夏祭りとか…。
……そういえば、山でミステリーサークル作って宇宙人を呼ぼうって言ってたのは、あれは冗談で良いんだよね？
あの時の明美の目が本気過ぎて、皆深くツッコめなかったけど。
多分怒られるっていうか…言ってたあの山、猪出るって聞くからやめとこうね。

まぁともかく、明美の事だから夏休みだからってだいぶ羽目を外して遊んじゃうんだろうけど、
この時期になると変な人も多いだろうし、気をつけてね。


…いや、本当に本ッ…当に。　変態には、気を付けて。

敬具

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　　　　—広庭—










　　　　—枯れた土地—

気付けば、私の身体は枯れた草むらの上で横になっていた。

こんな場所に居たっけ？私。
さっきまでは確か………王城の中の庭にいた筈だ。

花とか咲いてて綺麗な場所だった筈が…今の場所は不自然なくらいまるで逆だ。
右を見ても左を見ても、一面枯れた大地が広がっている。
アメリカのような荒野ならまだしも、どちらかといえば砂漠になってていっそ暑い。

おそらく寝苦しくなって起きたんだろうが…そもそも、いつの間に寝てたんだろう。
…横になった記憶が一切無いんだけど…

…待て待て。落ち着け。落ち着いて思い出そう。
確か私たちは、庭で兵士に追われてて…その後は…何だっけ？

いつの間にか近くに居たらしい腐肉が変わらぬ調子で声をかけてきた。

…腐肉も別に何とも言ってこない…

意識でも失えば、横になった記憶なんて無くても当然だろうが、
それこそ意識を失ったなら普通そういう説明だったり、その手に脈のある話をするだろうし…

大体、休憩って………？　…いや、そうだ。兵士に追われた後休憩しようって、言ってたような…

……記憶が曖昧過ぎる…眠すぎて記憶が飛んだ、とか？

…そうだよ、いきなりこんな環境になったんだから、ストレスとかそういう何かが関係してるのかもしれない。
記憶喪失とかって、心因性とかあるって聞いたことがあるし。

……な、何か怖くなってきた。
これからはちゃんと休もう。休む権利くらいあの変態だってくれる筈だ。…多分。



…じわりと残る当てのない不安感は、遠く荒野に霞む蜃気楼のせいだと思うことにした。