森で、初めて、他人と共に戦った。
隣に、後ろに、あるいは前に、誰かがいる、という感覚の奇妙さ。
落ち着かない。
振り上げられた腕や武器が私に向けられたものでないと、頭ではわかっていて、けれどどこかで怯えていた。
行く手を塞いだ相手だけを退けて、その共闘はあっという間に解散した。
……正直すこし、ほっとしている。

ついてきた鳥にはネクターを与えて、山梔子、と呼ぶことにした。
ウィスプや玄雲と違って、山梔子はすこしだけ、ことばを話す。
会話ができるほどではないけれど、そのほうがいい。
十全にことばでやりとりができてしまったら、私はたぶん、山梔子にさえ身構えるだろうから。
腕を伸ばすと降りてくる。食餌を投げればひとこと応える。
私にとってはありがたい距離感だ。

それにしても、この世界には奇妙な生き物が多い。
それとも私こそが、この世界にとって“奇妙な生き物”なのだろうか。
故郷でも、そうだったように。

一度そう思ってしまうと、先へ先へと進むひとの波がおそろしくなる。
進む道を迷ううちに、森は途切れてしまった。
目の前には、枯れ果てた砂の大地。川と森と田畑ばかりだった故郷では見たこともない光景。
戻るかどうかすこし考えて、私は結局、そのまま砂地に踏み込むことにした。

　　　　　　　アニマが微かに微笑む。