人に滅びた黄金郷の話をすれば、多くが夢物語だと笑う。

もっとも、中にはいくらか笑わず否定を避けるものもいた。
そいつらの多くは御伽噺を信じているのだろう人間を、
"尊重"しようと情けをかけてくれているのであって、
おとぎ話が事実であったと信じているわけじゃあない。

大概の人間は、自分でも気づかない内に何かを信じているものだが
それにしたって、もう少し実際的なものを軸に選ぶ。



自分の話をするなら、黄金郷とその守護者の存在を、
はっきりと信じていたとは言いがたい。

それを探す気になったのも、他のすべをあたって、
その全てに期待を裏切られたというだけの話だった。

他に残っていなかったというのが正しく、
多くの中からそれを選んだわけでもない。

それでも、豊かに暮らしていたというその郷になら、と。
細い望みのつるを捨てることができなかったというだけの話だ。



ただ、それだけに、或いは狂人の先導で歩いた末に──辿り着いたその場所で
夕暮れの金色を背負い、おとぎ話が巨大な十三の眼を伴い、
たったの十二人の前にその姿を現わしたときには、
粟立つような心地の中、皮肉さと爽快な気分を同時に味わった。


恐らくは、不信のもやを裂いて実態を持ち現れたおとぎ話の存在が、
どこかで愚かな道を歩いているのではないかと思っていた自分を、
信じず笑った人間を、善かれと思い情けをかけた慈善面を、
その威容でまとめて踏み潰してくれたような気がしたせいだろう。

言葉のわりには随分いきいきと敵の気配を探っている。

背負った薙刀を引き出し、構える