【Ｓｉｄｅ．ネム】
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（燃え盛る炎）




（怒声、悲鳴）




（鐘を叩く音、二回）




（刃で斬る音、何度も）

　　　　　　　　　　 ・ ・ ・ ・ ・
ネムは、17万Cでおとされたんだって。



そのときのネムは まだ、こオんなにも ちいさかったわ。　
おかあさまの もとから はなれて、同胞（はらから）の むすめたちとともに くらしていたの。　
あのちいさな森で、水をあび、陽にてらされ、どうぶつたちとたわむれ。　
へいわに、へいわに くらしていたのよ。　



それらはぜエんぶ、一夜のうちにうばわれたのだけど。　



ネムをもってかえったのは、人間のオス。齢はネムとおなじくらい。　
「仲良くしよう」 とやさしく嗤い、のばしてきた手は、とうぜんふりはらって。　
つうじなくても言葉をつむいだ。　
「なかよくなんて、するはずない」と。　
「だれが、おまえのものになるものか」と。　




……。



ふりはらったほうの腕がきりおとされたのは、その翌日 だったかしら。　






【Ｓｉｄｅ．伯爵】
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（ねじられ）

　
　
　
　
　

鼻血を拭き取る暇も無く、体勢を直そうと跳ね起きる。

顔を上げて見れば、先程まで助けを求めていた少女は高く持ち上げられており——


次の刹那、少女は風を切りながら、此方へ向け勢い良く吹き飛んできた！

迫る速度に反射し、握る得物に力が入る。

だが、それで良いのか？
このまま刀を振れば、少女は容易に両断されるであろう。

思考が回り、数瞬を圧縮して加熱する。

受けるか、避けるか、弾くか。


迫り来る少女の泣き顔を前に、次第に脳が膨張して行く感覚を得る。

眼前を光の帯が走り、在りし日の面影が駆け抜ける。

幼竜成りし頃、初めての得物を牙と爪で抉った日。

若竜成りし頃、山の主を容易く屠り去った日。

成竜成りし頃、数多の生物を蹂躙し尽くした日。

あのマタギに破れ、翼を失った日。

そして、人に変じ、その傍を歩み進んだ５０年の日々。


——腕の力を抜き、するりと得物を手離す。

同時に、両脚を開いて重心を落とし、両腕を軽く前へと。

そうして、猛スピードで飛んで来る少女を受け止めんと、身構えた。