『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.07.18.10:11、とある研究所にて——


　アーク。かつては巨大戦闘用ロボットであったが、ミラージュでの
決戦において大破。生き残っていたデータを元に、人型サイズで
復元された戦闘用ロボット。人型サイズとはいえ一般的な成人男性より
大きい。
　アーク自身の話によると彼のマスター、つまりパイロットはダークという
青年だが、今はクルゥという女性科学者がマスターだという。
ダークという青年について、見たことも聞いたこともないが、今は
居ないらしい。名前はダークでも、彼は『D.A,R,K.(ダーク)』関連の計画とは
無関係のようだ。
　マスターが二人居て、どちらのマスターとも仲良くやっているそうだ。
系統の違うロボットだが、羨ましいものである。こちらはつい先日の戦闘の後、
目覚めてからマスターと上手くいかず、仲も冷え切っていた。


「……またか」
　戦闘シミュレーションの画面にはアークの操るロボットが大きく映し出されている。
二時間程対戦しているが、一度もアークには勝てなかった。
　ロボットにしては演算が……処理能力、判断力が遅い。俺の欠点だった。
　クルゥによるとより人間的に作られた故の欠点だった。機械の長所である筈の
演算能力に欠けている。致命的欠陥ではないか。マスターに見向きされないのも
当然だ。
「俺は何のために作られたんだよ。『D.A,R,K.(ダーク)』シリーズって何のことだよ。
欠陥だらけのロボットに何の価値があるってんだよ」
　博士は俺に救助と生存本能に優れたロボットと言ったが、今すぐに戦闘用として
改造を施して欲しかった。マスターの役に立たないなら俺は要らない。
　力が欲しい。マスターの楯となり、剣となれる力が！

　頭部に鈍い音と衝撃があった。頭部へのダメージはあるが、人間のように痛みはない。
ダメージを把握出来るが、痛みがないの点はロボットの長所だろう。
　桃色の何かが床に転げ落ち、高速で回転しながら部屋を飛び出した。
「ミライ、大丈夫か？　今のは何だ？」
「俺は大丈夫だ。球体のように見えたが、判らなかった」
　その時、部屋に駆け込む人影があった。
「あぁ！　自分で作って腹立たしい！」
　長い黒髪を一つに束ねた女性、クルゥは普段の私服とは異なる格好だった。
真っ黒の羽根のマントを纏い、黒ずくめの格好だった。その姿は
ただの道化にしか見えなかった。