「トカゲどもを上手く飼いならせば、我が国はあの大国をも討ち滅ぼし世界の主権を握ることも容易となる…
俺はな、いつまでもこんな辺境の田舎主のままで終わる気はないのだ…くくく」

——鱗を持たぬ辺境の地の王がそんな話をしていた。

『"ヒト"と"竜"種族は違えど同じ大地に生きる民だ、必ず理解し合い共存できる』
そう信じて未来のために必要なことなのだと思ってやってきたが、やっていることは結局ただの戦争という種族同士の殺し合いで
一個大隊を与えられ大隊長として囃されても、部下はおろか自身でさえ戦争のための兵器として"飼われた"だけだった。


「地竜は図体ばかりのトカゲだなんてもう言わせませんよ！俺たちだって竜族なんですから！ねぇ大隊長殿！」
そう言って誇らしげに笑う若い隊員を幾人見てきただろうか。
そんな彼らに自分は幾度「あぁ、そうだな」と答えてきただろうか。
若い彼らと同様に自分も居場所を、竜としての価値が欲しかっただけなのかもしれないと今になって思う。
価値で決まる存在などこの世に有りはしない、と語ったのは他の誰でもない自分だったというのに——

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ちらりと意味ありげに琴音に視線をよこした後、何事も無かったかのように歩き出す。