「いやはや、参りました。
　どなたか鎧を作ってくれる方はいらっしゃいませんかねぇ」

そんな声を聞いて振り向くと、変わった服を着て帽子をかぶったおじさんがいた。
ちょっと垂れ目で間の抜けたような顔が憎めない感じだ。

「私でよかったら作ろうか？」

何の気なしに声をかける。

「カンナ、君はもっと警戒心を持つべきだ」

のんがそんなことを言ったけど、このおじさんも一揆に参加してる人みたいだし助け合いって大事だと思う。

おじさんはペコペコ頭を下げて

「おお、作ってくださると！ありがとうございます。
　私はナリ・キーン、商人でございます」

名前を教えてくれたから私も名乗ることにした。

「私はカンナ。
　いいよ、私でよければ作ってあげる」

「なんとお優しい。
　今からちょっと材料をとって参りますね。少々お待ちください」

そう言っておじさんは足早に遠くへ行ってしまった。
のんが何か渋い顔をしている。

「なによう」

「カンナはそのうち騙されてひどい目に遭うよ。
　それに無償で作るなんて！相手は商人なんだよ？代わりに何か商品を貰ったっていいだろうに！」

「そんな、何か貰えるほど立派なものが作れるとは限らないじゃん…。
　それに困ったときはみんな助け合うべきだと思うよ？」

のんは手に負えないって顔をして溜息をついたあと黙ってしまった。
呆れられたみたい。

しばらく待つと（っていうかゴブリンを殴ったりしていると）おじさんが戻ってきた。
やっぱり何度も頭を下げて、低姿勢で憎めない。

おじさんの持ってきた蒲公英から鎧を作るのに挑戦する。
裁縫は得意な方で、自分とか家族の服とか何度も作ったことはあるけど、鎧なんて初めてだ。
巧くできますようにと念じながら何とかかんとか鎧を作った。

「おお、見事な出来映え！
　カンナ様、まことにありがとうございます」

「そ、そうかな…。お気に召してなによりだよ」

誉めて貰って悪い気なんかするわけない。

「そこでお願いがございます」

「え？」

「この鎧の使い心地を試させていただきたいのです。
　簡単に言いますと、お手合わせ、お願いできますかな？」

一揆に参加する者同士、そういう力試しも悪くない気がする。
練習になるならいいと思うし。

「よろこんで！
　でもせっかくやるなら負けないよ！」


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そんなことがあった後。
今度はちょっと怖そうなお兄さんに会った。
背が高くて、真っ黒いスーツで黒い眼鏡をしてる。長めの髪はオールバックだ。

「嬢ちゃん、今の試合見てたで。やりよるのう」

さっきの練習試合を見ていたらしい。
流れる汗をハンカチで拭きつつ、私はファイティングポーズをとって見せた。

「でしょ、結構やるよ私！」

「元気がおうてええなぁ」

言ってお兄さんはニカッと笑う。
あれ、怖くないや。

「一緒に試合しとったおっさんは知り合いなんか？」

「さっき知り合ったの。私が鎧を作ってあげたんだ」

「ほぉー。嬢ちゃんは鎧が作れるんか。
　ならワシも服でもこしらえて貰おうかのう」

「いいよー」

「カンナ！」

軽く頷くと、さっきまで黙ってたのんが私を睨んでる。

「そんな簡単に安請け合いするものじゃない。
　自分の服を作る予定があるはずだろう」

うーん…確かにそうなんだけど…。

「なんや？予定があるんか。そのエンブリオの言うとおりや。
　嬢ちゃん、自分のこと優先した方がええで」

お兄さんはあっけらかんとそう言う。

「でも、自分のもお兄さんのも作れると思う」

またのんが溜息をついた。
それを無視してお兄さんに向かって笑顔を向ける。

「お兄さんの服、作ってあげるよ！」

「ええんか？悪いなぁ。
　じゃあ、これが代金じゃ」

「えっ」

お兄さんがお金を出してきたから私はびっくりしてしまった。

「いいよ、いらないよ？」

首を振る。
お兄さんはじっと黙って私を見た。
しばらくしてから口を開く。

「嬢ちゃん、あかんで。
　嬢ちゃんの、その物をこしらえる力は技術や。武器やで。武器なんや。
　何のための武器か？生きていくための武器や。
　たまには安売りしてもええかも知らん。
　けどな、武器を武器として使わんでいたら、いつか命取りになるで」

そう言ってお兄さんは私の手を取って、しっかりお金を握らせる。

「受け取ってくれ。
　ワシの装備を作ってくれるんやろ？」

ちょっとの間、私は受け取ったお金と、それを持つ自分の手を見てた。

この手が、生きていくための武器。
そして、生きていくためのお金。

「……うん」

下を向いて、小さく頷く。
それから顔を上げた。

「わかったよ、お兄さんありがとう。
　絶対役に立つもの作ってみせるから！」

助け合いっていろんな種類があるのかもしれない。
これもきっと助け合い。
悪くないや。


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ナリ・キーン（1481）さんと隼人（202）さんお借りしました。
キーンさんが悪い人っぽくてすみません。。。でも、悪徳商人さんだし。←
隼人さんの口調、きっと大間違いだらけで申し訳ありません…。エセ関西弁しか書けませんでした…。
お二人の行動はもちろんIFです