「たっだいま〜」

今日の進行を終えたロベリアは、街に戻ってきた。
長期で借りている宿の自室に入って早々、ベッドに飛び込む。

ロベリアは現在自分も参加している一揆の事を考えた。

最初は個性豊かな参加者が2000人以上もいて、案外早く片付くかも知れないと思っていた。
しかし実際は、あまりに広大な王の敷地や進行を妨害する多数のモンスターなどによって、
一進一退の攻防を繰り広げる形となった。

此度持ってきた装備の選択を誤ったのを後悔しつつ、枕元に置かれていた書物に手を伸ばした。

いくつか無造作に積み重ねられたそれは持参した植物図鑑だった。
比較的新しいものから、年季の入ったものまで、大小厚薄バラバラの数冊の図鑑は、
ロベリアにとって生活する上で大切なものだった。

彼女の実家は花屋だった。両親共に花が大好きで、ロベリアも大好きだった。
彼女の持つ花言葉や活用法の知識も、武器の名前も、香水も、全て幼い頃過ごした環境から来るものだった。
今は実家を出て旅をしているが、その先々でその地域特有の植物や触れ合い方を見るのが楽しみの一つとなっている。

新たな花々との付き合いや文化を学び、ロベリアはこの一揆を楽しんでいた。

やや薄暗いテントの入り口をくぐり、満面の笑みで男が出迎える。

男はテントの前に設置したテーブル、あるいは広げた風呂敷に商品を並べる。
食料品に食器や小さな刃物、縫製道具に細かい布などの日用品。女性向けに化粧品や石鹸のサンプル、清潔な布なども置かれていた。
粗末な紙だけやたら在庫が多く、どうやら現地生産しているらしい。

自嘲の素振りをみせつつ、在庫限りをアピールする。商売の基本である。残念なことに誇張ではなく事実であるが。

そう言ってやや得意そうにもちだしたのは……水着のサンプルだ！