ある日のノエミの日記

今日はとても寒かったです。今日は礼拝堂の暖炉の前でマリア様に呼ばれてお話をしました。
ノエミも大きくなったしそろそろ、伝えてもいいでしょうって。なんだろう？大事なお話？
マリア様は倉庫から取り出した箱と細長い袋を前に並べると、わたしは戦場でひろってきた子だって言われてたけど、実はそのときに一緒に置いてあったものだって。

ぼろぼろのあまり見ない感じの網かごのような箱を、言われるままに空けてみるとはきれいな服が数枚。これは着物というこのあたりでは珍しい種類のもので、女性用らしいきれいなお花の模様がはいっています。マリア様は遠慮がちに、わたしさえ良ければ着物を仕立て直して、服を作ってくれると言うので。わたしは、見たことのないお母さんと少しだけ一緒になれる気がして、1枚だけお願いしました。残りはいつか大きくなったらちゃんと着てみたいなと思って。

いままで、孤児だって言われて育ってたから、もうそういうものだと思って気にしてなかったけど、こうして自分の親に関係するものが出てくると、もっと知りたいって思ってもいいよね？

もう一つの細長い袋に入っていたものは、刀でした。鞘もなにもないむき身の刀。マリア様がいうには、同じ場所に落ちてたから、ノエミとお母さんを守ろうとしてくれたお父さんのものかもしれないねって。
気をつけてそっと袋からそっと取り出すと、戦場に落ちていたとは思えないぐらい、むしろ作りたてじゃないかと思っちゃうぐらいに綺麗で、吸い込まれるんじゃ無いかと思うぐらいに、ううん。きっとこのときわたしはもう吸い込まれてたと思う。その直後の記憶がなくなってたから。

あとで、聞いたんだけど、わたしは突然刃の部分を握りしめて、しばらく叫び声をあげて気を失ったって。
そのときそのとき刀身を握ったことなんてまったく覚えていなくて、覚えているのは刀に吸い込まれたときにただただ、真っ黒な、漆黒のとても怖い、悪意の塊のような衝撃を受けたこと。何か両親に繋がるかもと思って、受け止めようと思ったけど、もちろんそんなことはできなくて、もう何が何だかわからなくて、あまりの怖さに叫んで、気を失っったみたい。

マリア様にはあとでそちらではない方でたっぷり怒られました。気をつけてねといったのに、刀身をにぎったりしたから。魔法で治療してもらわなかったら、もうちょっとで指がなくなるかもしれないところだったって。

不思議な体験をしたわたしは、刀のことがよくわかるようになれば、もしかしたら、あの黒いものがなんだかわかるかもしれない、と思って、こんどリヴァランに教えてもらおうと思いました。

おやすみなさい