『ペット』




———俺の名は「キラーウルフ」。


直訳すれば「殺人狼」。もっと意訳を利かせれば「人食い狼」だろうか。
まぁ一般的に『モンスター』ってヤツだ。

このところ、“Ikki”だとか何とかで人間どもが騒がしい。
俺にとっては、そんな人間どもの事情なんて知ったことではないが、奴ら、人の縄張りに平然と入ってきやがる。

身の程知らず共が・・・いいぜ、教えてやるよ。


俺が“キラーウルフ”と呼ばれる所以ってヤツをよぉ・・・。







<<［平原］広庭 >>



ケッ・・・人様の縄張りを荒らす命知らずはどんな野郎かと思えば、
黒い服の優男に、黒い服のガキに、黒い肌の女とは・・・俺も舐められたもんだぜ。

ここは最初が肝心だな、ビシッとキメて、ビビらしてやんぜ・・・

・・・・・・。

・・・あれ？無反応？



えっ、聞こえなかったのか・・・？
いやいや、俺の声以外何も音してないだろ。聞こえないはずがない。
何コイツ、俺が凄んでんのにまさか無視か・・・？

・・・・・・いや、あまりの強敵に放心してるのかもしれん。ここはもう一回・・・

アメーバうぜぇ。・・・セリフ被ったぞ、おい。
てか、味方コイツかよ。やだよ、こいつの妙なテンション疲れんだよ。

なんか「スプラアァァッシュッ！！」とか言って自分の体を相手にかけることに執着するし、
そのあとビーストファングするこっちの身にもなってみろよ、たまんねぇよ。
つか、こいつ絶対毒持ってるよね？直接訊いたことないけど、いっつも舌痺れるもん。

まぁいいや、どうせまともに戦えるのあっちも優男と女ぐらいだろ。
アメーバが粘液掛けなかった方噛んで、食い千切って、それで終いだな。とっとと終わらせてやるぜ・・・。




〜＊〜＊〜＊〜＊〜＊〜＊〜＊〜＊〜

・・・なんか、全面的に優男が前に出てきたと思ったら、
急に銃を乱射してきて体中撃たれました。・・・痛ぇ。


てか、アメーバ脆過ぎ。なんか戦闘の前半ぐらいでいなくなったぞアイツ。
なにが「え！？お気に召さないとは！！」だよ、それ気に入るぐらいなら底なし沼に決死ダイブするわ。

あー、もう体動かないし・・・ダメだこれ。

・・・いや、俺「キラーウルフ」って言っても、これ種族だからね。
あくまで「殺す能力」があるってだけで、実績が伴うかは別物だからね、うん。



・・・俗にいう食物連鎖で、小動物殺したことしかありませんよ。

・・・・・・悪いかよ！それも立派な殺しだろ！ばーかばーか！！

・・・なにそれこわい。

あ、だめだ、この人、“本職”の方だ。
凄むとかマジ、無かったわ。失敗したわ、やめときゃよかったわ。・・・この教訓は次回に生かそう、うん。


・・・あれ、なんです？
もう僕、動けないんですけど、なんで銃向けてくるんです？

ほら、もう再起不能なんで、あと見逃して貰っても・・・あ、やっぱダメです？

ああ・・・短い人生だったなぁ・・・。


最後くらい、目を閉じて今までの自分の悪行（※小動物の捕食）を省みておくか。
あの世で閻魔様がその部分にプラス評価下さるかもしれないからな、うん。




・・・。



・・・・・・。



・・・・・・・・・。









・・・随分、“溜め”が長いな。

なに？命を弄ぶ焦らし？そういう鬼畜な癖でもあるの？
もしや、俺が目を開けた途端、目の前でドカンと弾が・・・




———と、恐る恐る目を開けたわけだが、

アレだ、最初にいたガキ・・・いやいや、お嬢ちゃんが、なんと鬼畜男の手を抑えてるじゃないか！
純真無垢な子供ってのは素晴らしいもんだね、たとえどんな命でも奪うことの愚かさを分かってやがる。
いやー、おかげで助か・・・。・・・？

・・・・・・え、なにあれ。

暗号？他の誰かに見られてもいいように、暗号で密談してんの？

うわぁ・・・女の人痛そう。

よく見ればアイツ亜人みたいだが・・・耳引っ張られるのって相当痛いんだよな。

お、今のは何となくわかったぞ！
あれだろ、“体毛”！俺の艶やかな毛並みに惚れたわけだな！

こんな幼気な嬢ちゃんを誑かしちまうとは、罪な男だぜ、俺ぁ・・・

優男が、にっこりと、荷物から「ネクター」を差し出してきやがった。

まぁしょうがねぇ、命の恩人の嬢ちゃんの頼みなら、俺もこいつらのIkkiとやらに加勢して・・・
・・・え、なに？ちょっと待って。・・・今、『ペット』とか言った？

・・・あ、あれぇぇぇぇぇ？

え、なにそれ、俺、戦力外換算なの？愛玩動物扱いなｎ








・・・「タマ」！？



それ呼び名！？俺「タマ」！！？？

ちょ、ふざけんな！流石にそんな理不尽な呼び名あって良いと思っｔ

あ、はーいにゃーん、今行きまーすにゃーん。












———俺の名は「タマ」。



かくして、俺の第二の人生。『愛玩動物タマ』が幕を開けたのであった・・・