コボルドと狼、それに奇妙な笑いを浮かべる人型の何か。
　この世界には亜人種と呼ばれる者が多数存在する。奇妙な笑いを浮かべるモノも、それに準ずる者たちなのだろう。
　調理される側という言葉。斃れた後に遺したモノ。人と植物の間の存在。
　リントには居なかった者だ。冬に枯れ、春に芽吹き、夏に茂り、秋に実る。そうした植物のサイクルを持つ亜人は、リントの気候を生き抜く事は出来ない。
　だから。
　だから、私は興味を惹かれて。
　生気を失った肌に、歯を立てた。


「……姉様、美味しくない」
「あれは芋だよ。生で食べれば不味いのは当たり前じゃないか、ティッキー」


　生の芋は時に毒があるのだから、軽率な事はするなと呆れ顔で説教されたのは、その夜の事だった。

上着と鎧を地面に脱ぎ捨て汗を拭くマシリーを横目に見て

*　*　*

目の前で騒ぎたてる兵士に辟易とした顔を向ける。

敵意や殺意を剥き出しにする。隠す様子は微塵も見られない。

シャキンシャキン… と、威嚇する様に大爪が擦れる金属音を鳴らす。

倒れ伏した兵士の懐を無遠慮に弄っている——。

ぐっぐっ！と屈伸運動。