敵兵を倒し、拘束しておく。
収束魔術力場はこの手の作業にも向くのが有り難い、と言えば有り難い。
短期間とは言え結束が解けるまでは、物理的にも扱えるのだから。

ただ問題は、この先何処へ進むかだろうか。
少しばかり強く打ち据えすぎたためか、情報を聞き出す前に昏倒させてしまったのは誤算だった。
・・・加減はしたつもりだったのだけれど。


——ともあれ、待っていても仕方がない。
水辺も先が見えない。環境こそ問題は無いが、契約可能なエンブリオは、やはり私とは相性が悪いらしい。
幾年経ってもこればかりは、仕方のない事だろう。

ふとした拍子に拾った巻貝を、宙に投げ、落ちるに任せる。
螺旋を描いた先が向く方向へ進むのも、たまには悪くない。

食事を終えて、「ご馳走様」の一言をもらうと、カレー妖精は上機嫌で皿とスプーンを受けとります。
そばで控えていたアムルが、いつの間にか用意していたらしい水筒からコップに水を注ぎ、そっと差し出しました。

嬉しそうにパタパタと舞いながら、ノノはくるりと回ります。
質量保存の法則に縛られない、妖精さんの技術によって、皿とスプーンは宙へとかき消えました。

そんなカレーだらけの話が一段落して、次の話題。

身を屈めて、視線を合わせてもらうと、アムルはじっと見返して答えます。
まだどう答えるべきか迷いがあるのか、後半の答えを口にする時は、そっと目をそらして。

きちんと答えてから、少し首を傾けて、最後に質問を。

男はふと、一瞬考え込んだ様子で

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　下らなそうに笑って、右手に魔術力場を形成した。

　
　　　　　　息を潜め、相手を見遣った。

　
　　　　　　ふっと笑って、緋色の力場を手に取った。