ここに我輩ことニャンダモン様の記録を残す。
俗に言う“ヒトもすなる日記というものを猫もしてみんとてするなり”といったところである

《厚かましい太陽の下で》
我輩の小さな体はセイウチどもの巨躯に吹き飛ばされ、小川の水面に叩きつけられる。
“水も滴るいい男”と言えば聞こえはいいが、水が滴る不快感を拭えはしないのだ。

相変わらず、うるさいカワイコちゃんである。
その場は反省しているように見せかける。黙り込んで頭を垂れるだけでいい。
ボディランゲージの業に長けた我輩に掛かれば、お茶の子さいさいなのだ。

夕食を食べることなく、夜が明ける。
鳴り止まぬ腹を黙らせるために、朝食にベーコンを貪り食う。
心行くまでベーコンを貪り終えた後、日向ぼっこを満喫することにする。
ずぶ濡れとなった毛皮が乾くまで時間がある。それまでの時間をぼんやりすることに活用する。


気がついたら瞼が下がっていた。うたた寝してしまったようだ。
閉じた眼を半ばだけ開ける。妙に暗い、しかし、小川に反射した陽の光が見える。我輩の周りだけが異様に暗いのだ。
背後をみると脂肪の塊が太陽の光を遮っている。憎たらしきセイウチが再び我輩の目の前に現れたのだ。

セイウチが荒い鼻息を、より一層を荒くする。暑苦しいことこの上ない。
さっきからフゴフゴと何か口を動かしている。さっきから唾が飛んでくる。実にお下品である。
生憎だが、我輩はセイウチの言葉はわからんのだ。