世界を混沌が支配しようとしている。各地で、大規模な一揆が続発している。新たな王の暴力的な支配に対する反発が、この元素の世界を戦火に包もうとしている。
　ゼイラスは、そのにおいを懐かしんでいた。自分がかつていた世界。ここへ召喚される前に存在していた世界もまた、ここと同じような状況下にあった。
　人と、魔のものが対峙する世界。
　その世界から、ゼイラスは飛ばされてきたのであった。

　腐蝕剣ハマス・ソイルが縦一文字に一閃し、兵士の肉体を真っ二つに断ち切る。血と脂と臓物を盛大に撒き散らしながら、無力なる襲撃者は倒れ伏した。
　
　ゼイラスは知っている。この戦いの行きつく先に、己が求める強敵が必ずいるだろうということを。
　暗黒の瘴気を放つ剣を一振りし、血を払い落とす。

「まだ、向かってくるものはいるか！？
　この俺に両断される覚悟があるならば……前へ出るがいい」

　戦いの中にしか生きられぬ男が、死闘を渇望していた。