夢を見る。




時折、昔の夢を見る。




もちろんまだ妖精たちと出会う前。
平穏でいて退屈な、しかしまだそれを不満に思いこそすれど、行動にまでは至らなかった時期。



その頃、少女の傍らには少年の姿があった。

生まれてこの方大きく代わり映えのしない村での生活、
お互いの顔も幼いころからよく見知っており、少し大きくなったからといって外から見た何が変わるでもない。

そんな中で、なんとなく。
心を通わせることとなった２人が、やがて体を重ね、深い関係となってもそれは珍しいことでもない。
２人は２人でいることで、村での生活に抱いていた不満を上回る充足感を得ることができていた。



できていた、はずだった。





少し前から様子はおかしかったのだ。
何か、微妙な違和感を感じていた。


視線が合わなかったり。
話題を不意に逸らされたり。


それでも、何かあるのならばいずれは自分から話してくれるものだと思っていた。





だが、唐突に。
その機会は失われた。





村に、王の使いを名乗る者が現れたその翌朝のことだ。









少年は、王の使いと共に、村から旅立っていった。


少女に、「必ず迎えにくる」という言葉を残して。






まどろみの中で、様々な言葉が、口にしなかった想いが渦巻く。





それが溢れ出そうになる前に———



いつも。目覚める。

そう言った後しばらくして、あっと何かに気づいたような素振りを見せると、ばつが悪そうにこちらへ向き直る。

　挨拶をされ、にこやかに返す。

　そう返しつつ、拳を握って軽くシャドーしている。