先日は悪霊に手ひどい仕打ちを受けてしまった。エルは今日こそ悪霊に一杯食わせようと思考を巡らす。だがこの悪霊、エルが手で追い払おうとしても、透明になって手は空を切るばかり。そしてイヒヒと笑うのだった。

「何か苦手な物でもあるのか……それくらいは分からないとこちらも手だししようが無いぞ」

　悩んでも仕方ない。それより今日は久しぶりに食事にありつけた。たくあんという保存食らしい。しかし少ない資金を削って買った割には腹に溜まっているような感覚は無い。しかも妙に塩辛いのだ。

「まぁ、無いよりはましか……」

　するとエルは妙なことに気付く。妙に肩が軽い。悪霊がいないのだ……どこへ行ってしまったのだろうか。辺りを見回しても姿は見えない。奇妙なこともあるものだと、エルはたくあんを食べ終わる。

　次の瞬間、エルの頭に何かがどさりと落とされた！　エルは悲鳴を上げ立ち上がる。頭が土まみれだ。そしていつものイヒヒという奇妙な笑い声。どうやら悪霊が雑草を引っこ抜いて頭にぶちまけたらしい。

「くっ、きさま、いままでどこに……」

　そこでエルははっと気付いた。悪霊はたくあんが苦手で食べてる間は近寄らなかったのでは？　そこで先程買ったたくあんの包みを鞄から出す。するとスッと悪霊は消えた。そしてたくあんを鞄に戻すと、悪霊はまた姿を現したのだ。

（フフ、分かりやすい奴め……貴様の弱点はこれだな！）

　しかしたくあんの何が嫌いなのだろうか。資金面から言っても毎回たくあんを買う余裕は無い。研究を進めよう。いずれ苦手な物が分かるはずだ。

（悪霊め、今にみていろ……フハハ！）

木の上につるしてある兵士の服を手に取り、兵士たちの上へと掛けていく