しゃべりながら、私は淡々と足を進める。攻城戦は続いている。日除けに額に手をかざして、遠くに霞むお城を見やった。
　鬨の声が聞こえる。今この時にも、このお城のどこかで、遠い世界から来た冒険者の誰かが、その剣をきらめかせている。

　ほんの短いあいだ歩いただけでもわかる。
　この世界は、火を起こすのにも、畑を耕すのにも、夜を明るく照らすのにも、
　ううん、人の営みだけじゃなくて、この世界がこの世界である水がせせらぐにも、風がそよぐのにも、
　ここでは、エンブリオの力が必要なんだよ。
　そのエンブリオと人とをつなぐネクターを独占しちゃったら、ここにはなーんにもなくなっちゃうかもしれない。

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　厚生年金の歴史


　厚生年金の仕組みを理解するには、その成り立ち、法改正の歴史を理解することが必要不可欠になります。なぜなら、厚生年金の仕組みというのは、言い換えてしまえば、改正とその経過措置の仕組みだからです。そこで、今回は厚生年金の歴史を大雑把に追ってみましょう。


●昭和16年　厚生年金保険法の前身である、労働者年金保険法制定。
●昭和19年　労働者年金保険法を厚生年金保険法に改称。

　昭和16年といえば、日本はまさに太平洋戦争に挑まんという年、老齢年金の制度は保険料を徴収してから実際の給付が始まるまでにタイムラグがある制度です。では、このとき徴収された保険料は何に使われたのでしょうか？
　……このように、日本の年金制度はそもそもから戦時調達のために作られた制度だという見方もあります。そして、様々な理由により厚生年金はその後給付の縮小、保険料の増加を続けていきます。そのため、厚生年金の歴史は「裏切りと改悪の歴史」だと言う人もいます。その見方が正しいかどうかはともあれ、厚生年金の成り立ちは、その国の社会の在り方に大きく影響を受けてきたのです。


●昭和36年　国民年金法の全面施行。国民皆保険の達成。

　この年、国民皆保険の体制が整いました。
　しかし、サラリーマンの配偶者は任意加入にとどまっているなど、皆年金と謳いながらもその内実はまだまだ皆年金には満たないものでした。


●昭和60年　基礎年金制度の導入。昭和61年4月1日試行。

　それまで年金制度は国民年金、厚生年金、共済年金などばらばらな制度として運用していたのを、国民年金を基礎年金とし一元化、全国民に共通の基礎年金が支給されることになりました。
　この基礎年金に、各被用者年金（厚生年金や共済年金です）を上乗せして支給されることから、日本の年金制度はしばしば「二階建て年金」と呼ばれたりします。
　この制度が今日の年金制度の基礎となっていることから、昭和60年改正以後の制度を新法、それ以前の制度を旧法として区別します（……基本的には旧法のほうが手厚いんですよね……。その分、加入者の範囲が狭いですが）。また、この改正によりそれまで任意加入とされてきた第二号被保険者の配偶者（サラリーマンの妻とかです）、第三号被保険者として国民年金に強制加入されるようになりました。第三号被保険者は、第二号被保険者と一緒に保険料を納めてることになるので、事実上保険料の支払いがありません。いいなあ。

●平成6年　国民年金・厚生年金法改正

　それまで、老齢年金は60歳に達することを保険事故として、老齢年金を支給していました。しかし、少子高齢化していく日本の社会の現状を踏まえ、社会保険は「60歳引退社会」から「65歳現役社会」への変換を余儀なくされます。それに併せて、60歳から65歳までの基礎年金部分の支給を撤廃。生年月日に応じて部分年金として支給する形が取られるようになりました。


●平成12年改正

　少子高齢化が予想を上回る速度で進行し、社会経済が停滞を始めます。それにもかかわらず、平均寿命、日本人の長寿化が進んでいることに伴い、年金制度は支給開始年齢の見直しを迫られます。
　この改正により、60歳から65歳までの厚生年金部分の支給を廃止。
　老齢年金は65歳から支給されるよう改正されました。
　（経過措置として、生年月日に応じて支給開始年齢がずれ込む形になっています）

　
　本当に大雑把に説明するなら、こんな感じでしょうか。他にも結構重要な変更が目白押しなんですが、今回は割愛しましょう。
　そして現在、厚生年金、国民年金は67、8歳からの支給を前提とした議論が行われているようです。私たちの知らない間に支給開始年齢はどんどん下がっていきます。
　年金の歴史は裏切りと改悪の歴史、そうくさす気持ちもわかるような気がします。

　日本の年金制度を語る上で、これだけは覚えておいていただきたいというこの制度の大事な特徴があります。
　それは、「世代間扶養」です。
　今保険料を支払っている世代の保険料は、今受給を受けている世代の給付を支えています。
　かつて保険料を支払っていた世代の給付は、これから産まれる子供たちが支えていくのです。



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　お人形君は、渡したスマートホンをじっと見つめている。もしかしたら、お人形君なりに何か思うところがあるのかもしれない。

　お人形君は、大げさに手を広げて、いいことを思いついたと言わんばかりに飛び上がった。
　案外、お人形君の言うとおりなのかもしれないなあと思う。
　ネクターってなんだろう？　王様は何をしたいんだろう？
　私たちは、本当に一揆に参加してもいいのかな？
　疑問はつきない。
　微かな不安を振り払って、私は努めて明るくお人形君に声をかけた。
　きっかけや理由なんてどこでうまれるからわからない。

　他人事みたいにはしゃぐお人形君に、私は小さく苦笑を返した。

後ろを覗きこんで、少女人形の方の首根っこを無造作に掴み上げ。

宙でぶらぶらと揺れながら生き別れる形となったお人形君、へと手を振り。