——誰かの古ぼけた日記——



「やめろ……」



　愛する我が子を手にかける。
　それがどれだけ辛い思いか。それがどれだけ身を引き裂かれるような思いか。これが摂理と言うならば、私は私の創造した世界を憎まずにはいられない。



「よせ、来るな……！」



　普段は憎たらしい笑顔で秩序を破壊して回る我が子でさえ、死を目前にしては表情が恐怖に引きつっている。
　大丈夫だ、安心なさい。
　私は優しくそう呼びかける一方で、我が子のの腹を雷の槍で貫いた。
　雷鳴と悲鳴が入り混じり、悲痛な叫びをあげて涙ながらに命乞いする我が子の首を、私は風の力で刎ねた。



　我が子は肉体を失い、現世に影響する術を失った。
　なんと哀れな存在か。ただ彼は数式として存在し、世界を回すだけの歯車となったのだ。
　全ては私のせいだ。永遠の時間をかけて償わなければ。我が子が私を赦すその日まで。



　だが驚くべき事に、我が子は生きていた。
　恐るべき執念と憎悪を糧に、世界中のあらゆる厄を数式に組み込み、組み換え、辛うじて現世に存在を保っていた。
　だが二度と日の目を浴びる事は無いだろう。生きていると呼ぶには憚られる多くの制約を受けながら、それでも我が子は懸命に空を見上げる事だろう。
　いつか私を殺す為に。

そう言うと万已楽は腕を斜め前方に突き出し、空を飛ぶ鳥を眺めながら準備をする

腕の白い装甲が開き、扇状にバリアを展開する
そのまま　手のひらに裂け目が開き、腕の中から砲身が頭を出す
バチリ　バチリ　と手首の緑の石が雷を纏い、何かのエネルギーを発しているようにみえる

手のひらの砲身から雷球が放たれ、空を飛んでいた鳥に直撃し、落下する

興奮しすぎて変態という部分は聞き逃した。

アリシアは　コウモリから　めを　そらして　いる▼

怖がることも怯えることもなく、普通に嬉しそうである。

保証は出来かねるが、と肩を竦めて。

それからまじまじと彼の全身を眺めてから。

と、素朴な疑問を漏らしてなどみる。

　よく分からない目玉、呪われた血染めの衣（色落ちしてる）、無害と言いつつ王様をぶち殺す発言。
　目の前のさっくんを、奇怪なものを見るような表情で、見て。

　率直にそう訊いた。

　『一つ目』の、羽ばたきの音。
　数秒の、沈黙。

　平然と、呪術師は答えた。

　なんて、当たり前のような口調で、呪術師は笑う。