４日目：『魔術士と魔銃の関連性について２』

アイリの持つ魔銃が普通のものと異なる点。
その二つ目。それは、運用する目的にある。

通常、魔術士が戦闘において魔銃を用いるのは、射程距離を伸ばす為だ。
近距離攻撃用の魔術を扱うものが、自身の魔術を変質させないまま、単純に射程距離のみを伸ばす事ができる。
魔銃には、そういった利点がある。もちろん、銃弾を打ち出す以上、銃の扱いにも長けていなければならないので、簡単に扱えるものではない。
ただ、魔術修練の時間をそういった銃鍛錬の時間に充てるだけの価値は、そこにあった。

通常は、そうだ。
しかし、アイリにおいては多少事情が変わってくる。

まず、アイリの扱う魔術、「スペルカード」に関して。
その射程距離は、１km四方。
超長距離にして、大規模殲滅。いくつかの制約はあるものの、強力な対軍魔術である。

故に、そもそもからして、銃射程よりも長距離の射程を持つ時点で、魔銃を持つ必要性は無いと言える。普通なら。

だが、逆にそれが宜しくない時というのがある。
1km四方に渡って、『無差別に』展開される魔術による破壊効果は、効率的に敵を殲滅できる一方で、範囲の限定や、対象等の制御が出来ないという欠点がある。
これに関しては、先の『魔術・スペルカードについて』にも述べたとおり。

だが、その効果範囲を、魔銃を用いる事である程度制限する事が出来る。
ひとつ、魔弾という要素。弾丸という限定した形にする際に魔力を変質される事で、スペルカード本来が持つ効果範囲を多少抑える事が出来る。
そして二つ目、アイリの魔銃には、２体の妖精が憑いている。
スペルの発動を、『これらの妖精を介して、不完全な状態で発動させる』事で、魔術の威力をさらに低減させる事が出来る。
これらの要素を組み合わせる事で、アイリの対個魔術が成り立っているのである。