【肆：少なからず厭う者】

３日目。
あらたなエンブリオと契約したので、ちょちょっといじって妖怪属性にしてあげた。この子は二尾猫、いわゆるネコマタだ。

猫又という妖怪を見ると、叔母を思い出す。
正確には、叔母は狐鬼だったのだが、『尾の数が２本』という点で共通していた。叔母は二尾狐だったから。
こういった尾を持つ妖怪というのは、長く生きれば生きるほど『尾が増える』という特性を持っている。
尾の数とは妖力の量。それは、基本的に長寿の妖怪であればあるほど増えていくからだ。だから、同じ年齢の妖怪でも才能のあるものかどうかで、尾の数が違ったりもする。叔母は、その年齢としては、妖力はあまり強いとは言えない方だった。
ただ、叔母は異常に力が強かった。きっと、鬼としての素養の方が強かったんだろう。その圧倒的な怪力でそんな程度の事を覆すくらいに強かった。尾の数なんて、妖怪としての格なんて、問題にならないくらいに。

狐の妖怪といえば、九つの尾を持つものが人間達にはとっては定番というか、そういうモノがかつて、人間を滅ぼそうとしただの何だの、色々とあったらしいのだけれど。
そんな事は、私達妖怪にとってはどうでもいいことだった。
強ければ、それが正義。
鬼の世界とは、そういうものだから。

降り続く雨——今や霙となっている。
その中心から逃れられないラッカは凍えているようだ。

　ぺこりと包拳礼を行う