……気候が変わりすぎでしょう。

あの小川や庭園から、ちょっと飛んできただけなのよ？ 私。

こんな枯れ果てたような土地が広がっているなんて、
どう考えても普通じゃない。

砂漠、といえば砂漠なのでしょうけれど、
ひび割れたような土に、土埃で覆われてしまったような空。
お世辞にも綺麗な場所とは言い難いわね。

…ああ、羽が土埃で物凄く汚れそうだわ。
少し探索したら、あの川に戻って少し水浴びでもしようかしら。

呼びかけに応じてテントから顔を出す男。どうやら何かの作業中だったらしく、がたごとと音を響かせてから出迎える。

男はテントから風呂敷に包まれた商品を持ち出し広げてみせた。小さめの食器や洗濯用具などの日用品、保存しやすい食料品、裁縫や鍛冶の入門道具などがある。
それに化粧品や石鹸の見本らしきもの。街に比べればやはり品揃えは劣るようだ。

心の中の警戒には気づいていないようだ。
もっとも、何か問題の起こるような会話でもなかったが。

話しかけられた直後は怪訝そうな顔をしていたがすぐに喜色に変わる

驚いたことに、黒猫は女性の名前を言い当てた。

ホントに覚えているかどうかは怪しい……