この世界に落ちてきてから数日が経った。

落ちてきた、って言っても、別に空から落ちてきた記憶があるわけじゃないけど、
ほんとに空から落ちてきた女の子もいるらしいから僕もそうかもしれない。

それはさておき、ここに来てから何人かのひとと話せた。
ユナちゃんにれんげちゃんにういろーさん、
それに……えーと、宝石の好きなひとにがらくた好きなひとに……
あ、あとどこで会ったのかあんまり覚えてないけど、この世界にも妖精さんはたくさんいるみたい。

ひととこんなに話したのははじめてで、話すと思い出すこともいっぱいある。
訊かれないと記憶がすんなり引き出されないというか、
何を忘れてるのか自分では思い出せないから、もっともっと話した方がいいのかな。

まず思い出したのは。おとーさんのこと。
おとーさんに捨てられてからも、雪が降るくらいまではおとーさんのことを見てたっけ。
雪が降って、ずっと埋まってるうちに考えるのに飽きちゃって、
雪が溶けて、おひさまが気持ちよくて、もっとおひさまの気持ちいい場所を探して……
そうだ、それであちこち歩くことにしたんだっけ。
それからどうしてたんだっけなあ。

コートを脱ぐと、フードの中で眠るグラスを発見した。
どうして来たのか？どこから来たのか？なぜここに収まったのか？分からずに、きょとんとした顔で眺めている。

グラスが風邪を引かぬよう、フードで挟み込むようにすると、丁度布団のようになった。
その隣に腰掛け、手持ちの本を読み始める。どうやら、目が覚めるまで待つようだ。

早速洗面器とかブラシフル装備で頭の上に乗るように指さしている。