変わった耳を持つ女の子。
エリアちゃんがずっと探していたという子。

Amnesia、と彼女は名乗った。
本名ではないみたい。
ホラー映画に出てきそうな怪物を2匹引き連れているけど、なんとも愉快な子たちだった。

彼女は「仲間に隠し事はしない」と言って正体を見せてくれた。
足がみるみる触手になって、5ｍはあろうかという怪物になる。
大きな目玉が空中から現れて、彼女の周りを飛び始めた。

まるで蛸や烏賊のような軟体動物を思わせる。
だけどよく見れば「花」に見えるような気もする。



彼女の目は頭にある二つの目だけじゃなく、
触手にもたくさんついているし、
宙を飛んでいる眼もある。
そのたくさんの目で、たくさんのものを見ている。

鳥のような姿の従者から教えてもらった。
彼女は21の真名を持っていて、相手によって名乗りが違っていたけれど、
つい最近になってようやく「Amnesia」という一つを名乗り始めたって。

それはなぜって聞いたけど、従者は首を傾げてた。
僕もたいして気にしなかったけれど。



だけど最初からそれがなぜなのか、もっとちゃんと考えておけば、
こんなことにはならなかったのだろうか？


僕は後に知ることになる。
彼女こそが『Maker』の謎を解くための鍵であることを。



そういえばAmnesiaは健忘症っていう意味だそうだ。
なぜそんな名を名乗っているのだろうか。

（まろやかな姿を眺めて）

（一礼しておもてを上げ）

（己の両掌と相手とを交互に見比べ）