こげたにおい
くずれいくかべ
ひきさくかんかく
このせかいのおわり


視界の端に蠢くボロクズが有る。
引き裂いたら、うごかなくなった。

「これで、ぜんぶおしまい」


つい半刻ほど前まで私の全てだった世界はすっかりその様を変えていた。
私を縛りつけていた寝台も、私を閉じ込めていた壁も、私を使っていたおぞましいものも、もうなにもない。
私を苦しめていたもの、私が消えて欲しいと願ったもの、私が終わらせたかったもの、全て壊しつくした
そこには、崩壊した世界の残骸がただ静かに横たわっているだけだった。
薄闇の世界、動くものは私一人。


「終わりか」
静寂を破って声が聞こえる。
私に力をくれた、助けてくれた声。

「うん、おしまい」
ボロクズを放り捨ててこたえる。
何かが潰れてひしゃげるような、そんな音がした。

「これから、どうする？」
「これから・・・？」
それまでただ生かされてきただけの私は、「これから」も「どうするか」も考えたこともなかった。
「これから」と「これまで」に変わりはなかったし、「どうするか」は知らなくても「どうされるか」は知っていたから。

「これから、どうする？」
再度の問いかけ。
私は・・・私はどうしたいのだろう。
問いに答えるものはなく、沈黙が世界を支配していた。