夢を見たのよ。眠る必要なんてなくなった身体だけれど、福ちゃんが眠たそうにしていると目を瞑って、めーそーすることが多くなったの、そんなぼんやりとした頭の中で思い起こすいろんなことは夢って言えるのじゃないかしら。

セイレーンの島のこと。みんなは小さくて歌が歌えない私のことを気遣ってくれたけれど、結局は一人ぼっちだった。だから、いつしか、私はもう一人の一人ぼっちだった「あのこ」と仲良くなっていた。あの子は私が軽はずみに島を出た後どうしているんだろう。・・・あんまり明るい子じゃなかったから、寂しがっているだろうか。島の中は安全だから私のように外にはでてほしくはない、それはないだろうけど、あのこは賢いから—。今思えば、私はあの子にひどいことをした。あの子にさよならもいわずに突然消えてしまったのだから。はじめて作った不恰好な雛菊の花飾りだけを残して。あのこには会いたいけれど、島への記憶は殺された時になくしてしまった。だから、あいたくても会えない。

・・・最近、自分の中に魔物のようなものがすんでいるんじゃないかと思う。いや、私は魔物なんだけど。私はあの兵士を叩きのめした時に何の良心の呵責も感じなかった。今までは少しは悪いと思ったけれど、怒りに任せて力を振るっていて、それが心地いいとすら感じていた。福ちゃんが心配していなかったら、どうなっていたことか。自分は福ちゃんよりは冷静でいるつもりでいたけれど、明らかに冷静さをかいていたのは私。自分が危うい存在だということが分った。なるべく、福ちゃんに心配なんてかけたりしないように、こんなどす黒い感情はしまっておかなければならない。

マーメイドが襲い掛かってきたのよ。お友達だったから、話し合えば分かり合えるかもとも思ったけど、相手はこちらを明らかに敵視しているし、福ちゃんを守らなくちゃいけないから、だから、戦うのよ。辛いけれど。

福莉日記
でかい口叩いてた割にはたいしたことなかったな。いきなり襲い掛かってきたから、ヒナは吃驚したんだろう、そうだろうと考えておく。憎悪の感情をあいつが持ち合わせているとは思いたくない。ある意味では純粋な奴だから、僕みたいな歪んだ人間と同じ感情を持つなんて思いたくもない。そう思いながら城を目指して、進むとマーメイドに出会った。マーメイドはセイレーンの同胞ではなかったか？ヒナの顔を見ると戸惑っていることがてに取るようにわかったが、僕の顔をみると、「絶対大丈夫だから。」といいながら、戦闘準備を始めた。・・・僕のために無茶をしているんだとは分る。ただ、僕は何も手を差し伸べることは出来ない。そんなことをすれば、もっとあいつを傷つけることが判っているから。人間の社会に同化しようとはしているけれど、それがこいつの中で軋轢を生んでいつか壊れてしまうんじゃないかと思って怖い。壊れるくらいなら、いっそもとの人形に戻してしまったほうがいいんじゃないかなんてむごいことを考えてしまっている自分に腹が立つ。ヒナに僕がしてやれることってなんなんだろう・・・。

あんな太ってないよな、と自分の体を確認する。大丈夫、まっちょだ。

それも、人間相手なのでエンブリオのような連中にはまったく意味がないのだが。

どんなマスターだ、と若干興味がわいたようだが、真剣な顔をしたヒナの言葉を聞けば、ハッ、と笑い飛ばす。

そういって、はっはっは、とわらいだす。

（空から聞き覚えのある声が聞こえると顔を上げる。その姿を目で確認すると両手で大きく手を振って迎えた）

（メイドの女性の呟きは聞こえていなかったらしく、目をぱちぱちさせている。）

若干、更に凹んだ。

精神的に何か、面倒ごと、巻き込まれ、という言葉にだんだんとリマの周囲を覆う空気が重くなっていくように感じられるだろう。
そして、そっと傍らの少年…アニマに視線を移した。
視線を向けられた方はしれっとした顔で尻尾を振っている。

少々懐かしそうに目を細めた。

不満げに口端を歪めて文句を言う。