『くそっ、なんなんだよ！…来ないでくれよ！』

　




　　王城から少し離れた森の中。小さなエンブリオが、何度も背後を振り返りながら走っている。
　　


　背後には、黒い影…まるでアメーバのように、地を這うようにして、追いかけてきていた。　　






『何だこいつ…こんなやつ、見たことないぞ！』






　　　彼は、生まれてからずっとこの森で過ごしている。そのため、美味しい木の実や毒のあるキノコに関してはもちろん、
　　この森にどんな生き物がどのくらい住んでいるのかも網羅しているつもりであった。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『うわっ…！？木の根が、引っかかっ…！？』







　　　　　しかし、自分を狙い追いかけてくる黒い影…それは初めて見る異質な存在であり、未知の物体である。
　　
　　　　　　　　　　　　　　






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『やめろ…嫌だ…』








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　わかる事は、この影が自分を狙っており…








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『来るな…！』
















　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今まさに、そいつに「喰われる」瞬間に直面している事だった。




















『来るなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！』

　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　＊

　

　王城から少し離れた森の中。小さなエンブリオが、気を失って倒れている。

　






彼のすぐ横には黒い影が、まるでアメーバのように蠢き…

　　黒いヒトガタを形成し、佇んでいた。









　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　＊　　　　　　　　 　　　　＊　　　 　　　　　　　　　＊

王城の広庭から、黒いバイク…『マシンフェアリーソーン』に跨り、シュウスケとフィリーは森の方角へと疾走している。

このメルンテーゼに訪れて以来感じる事がなかった気配…
今まで妖精界を巡り、戦ってきた『敵』の気配をフィリアスが感じ取ったのが数分前の出来事。

　今まで妖精界にしか現れないと思っていた敵が、このメルンテーゼにまで現れた。

そうだとしたら、何とかしなくてはいけない。逸る気持ちを抑えようとしながらも、ハンドルを握る手に力が籠ってしまう。






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　少し強い風が、王城前を通り抜けて行った。

エリーにじゃれついているようだ

二人——言葉からして、一人は妖精だが——の説明に、ほんの少し混乱する。
自分から聞いたのだけれど、あまりに新しい情報が一気に入って来すぎた。

妖精の言った言葉を反復するが、そのとらえ方で良い物か自信が無い。

まじまじと彼の腰のベルトを見つめる。
機械の衰退した私の世界では、ありえなかった技術。
単純に、素晴らしい物であると思う。

　スカルの身体から、契約エンブリオの一人が姿を現す。手乗りサイズの大きさで、一本結びの銀髪と銀の瞳、襟に血が染み込んでそこだけ赤くなった白シャツに漆黒のマントを着ている。だが一番特徴的なのは彼女の持つ羽である。触れたら切れそうな鎌の刃が対となって、上から大中小、合計6本生えているのだ。彼女の纏う、冷たそうな青い魔力がさらにその切れ味を増させていそうである

『”その男…精霊を纏いて悪を挫き、その男…時空を渡りて正を為さん。”』
『”世界を繋ぐからくりにて、伝説は甦る”』

仮面の男は一呼吸おいて、貴方達の問いに答える。

少し遠目から、貴方達の方を見やる影が見える。

少女はたたたっと貴方達の元へ駆け寄って来ると、バックルを指さしながら、満面の笑みで小首を傾げた。

そして、少女の影から小さな影がもう一つ。見たところ妖精のようだが、ぱたぱたと忙しなく動いている羽根からは、機械的な駆動音が聞こえる。

ひと通り勝手にわたわたした後、こほんと恥ずかしげな息を一つ吐いて、少女は再び笑みを浮かべる。

　
　あぁ、止まらない。どうにも口が止まらない。
　今一つの問題としては話しているのが彼自身ではなく、
　その首に巻き付いているマントであることだろうか。

フィリーさんに声をかけられるとごそごそとズボンのポケットを探る。
やがて引っ張り出したのは布包み。それを開くと何枚もの写真が入ってた。

何枚もある写真には集合写真もあれば彼と知り合いで撮った写真もあった。
よく見れば手首から先が機械化した者や、生気を疑うほど土気色の肌の者もいた。
だがそのどれもが一揆の参加者には見かけない顔だった。

そう言うと秋月の鋭い目つきが少し下がる。
意識的に下げているのか、そんな表情で握手を求めるように手を差し出す。

賑やかな妖精の様子に少し戸惑った様子を見せたが、笑顔に口元を綻ばせてそっと手を伸ばし

妖精が妖精に語りかけるのと同じように、女は青年に語りかけ。

唐突に、そんな問いかけをよこした。

　なぜか、こころもち遠くからちっこい女の子が声を掛けてきた。
腰も引け気味でなんで声を掛けてきたやら、といった風体で。
どうやら、傍らの妖精さんも目に入らないくらいには真剣＜しりあす＞な面持ちである。

　自分でも何を言ってるのか良くわからなそうですが、果たして意図は伝わるでしょうか？

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！