—排他秩序


秋の月の通夜。
故人、小ノ木家・祖父　 小ノ木　重蔵（じゅうぞう）

通夜中は故人を憐む一方、
一人の男に奇怪を抱き、村人達の視線が集められていた。


帰り道—
通夜を終えた村人達は、顔を見合わせながら談話を始めた。


「重蔵さん、あんなに朗らかで元気そうだったんだがな…」

ぽつりと、重蔵と仲の良かった同年代の老父が呟く。



「くわばらくわばら…」

数珠を握りしめた老婆が同意した。



「あの一家は変わり者だしな」

「…そうね。ウチ（の家）じゃあなくて、本当によかったわ」

若夫婦が生まれて幼い赤ん坊をあやしながら、相槌を打つ。



「重蔵さん、話をぼかすからよくは分からんが…、あの大柄の男…よそ者だしな」

「なあ親父。あのおじさん、何処から来たんだ？」

「片目、真っ黒！ちーちゃん、あのおじちゃん怖い！」

二人の子の兄妹と手を繋ぎながら、家族の父親は眉をひそめた。

「…病死じゃあなあ。庭にはご神木が植えてあっても…くわばらくわばら。」




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「ねぇ。お爺ちゃん…。どうして巳南さんをウチに招き入れたの…？」

八の字の眉で、困り顔の孫。龍貴が問いかける。

「ふむ？」

「………困っていたから、かなぁ？」

朗らかな笑みで、優しく言った。


『困った者を救う。人間思いやりが大切だろう？』




—その時の私は、祖父の言葉が鵜呑みに理解出来なかった。



人の善悪は区別出来ない。
秩序は、受けいることを拒めば、従来通りの平穏を保つことが出来るから。

マッスルポテトの満面の笑みを見、固まる。

た、逞しい…。巳南さんより…ラルフさんより…ムキムキしてる…。
さすがに…目指したい…男性像は…こういう方向とは…違うかな…って…。

納得したように数回頷いてみせると、その首を傾がせ空を見つめる。