＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　リレッタのギルド日誌　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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—　メルンストゥーラ　—



見えたのは、黄金の光条。
生み出された空間から、やがて巨大なその全容を覗かせる

巨大エンブリオ　マァムブ

黄金郷　カダイエを守護し、空間に依存するエンブリオ。

（なら、ヴェルドプレギュエラも……）
故郷の、マァムブと同程度の異様を放つ巨大エンブリオを想う。

4対と1の瞳。
天使を思わせる巨大な一対の翼
天に昇りし時ですらその全容のわからぬ体躯は神と人を結ぶ一筋の柱の様だった。

対して

6対と1の瞳。
虫を髣髴とさせる鍵爪と足、そして緑色の薄羽根。
ズルリと抜け出したその体躯はまるで岩山から切り出したかのような、要塞の様だった。


ギョロリと向けられた瞳に射られる感覚。敵意ではなく、評価する様な視線。
……なんて、解る様で判らないことなのだけれど。


「あぁ〜あ、やっぱり格の違いってやつかしら。　ね、カディエ？」

今更じゃない。契約した段階から解ってる事でしょう？

「でも、ヴァルドプレギュラは——」

ハッ。手加減された事もわからないの？

「はいはい、わかってますよーだ。でも……」

でも？

「あれだけ食べたんだし———」

私の前で、その話題は止める様に、前も言ったと思うけど？

「っくく……怖ぁいお姉さんだこと。」

………。


「また、暫くは……」

そうでしょうね。でも、きっと。

はじめこそあった抗議の声も、元よりそんなに逆らう気もないからそのうちに黙ってついていく事に。たどり着いた馴染みといえば馴染みの厨房。
言葉が通じぬのなら何より行動、という現状での行動は大変わかりやすくて、本当に助かる。

出てきたティーセット。ホットケーキ。
示された椅子。
なるほど、といったように一つうなづけば、ぽんぽん、と叩かれたその椅子の前に腰を下ろし。

食事に関して遠慮の類は一切しない主義だ。…太る心配こそはあるが、これぐらいは多めに見てもらえるはず。たぶん。
頭を垂れ……かけて、やめた。少し思案するように、首をかしげた後。
通じるか通じないか、の確認をするように、ぱん、と両手を合わせてから頭を下げ。……様子を伺うように、ちら、とリレッタのほうを見る。

「エルフでしたっけ？」と質問を受け

そのまま黙りこくってしまうがかき混ぜる手は休めない。

………

なにか嫌なものを振り払うように顔をぶんぶんと左右に振る

チャカチャカ混ぜ混ぜ

視線を向けられると、アムルは慌ててフードを手で直します。

物憂げに視線を落として、そんな感想を口にしました。

ぺこり、と頭を下げて、見送りました。

離れていく背中を見ながら、腑におちない、という顔をしているのです。

言い言い手渡されたメモに目を通し、視線をリレッタに戻す。

しばらく。
メモに書かれた食材を抱え、キッチンに戻ってくる。
手近な場所にそれを置き、軽く首を回しながら口を開く。

苺香は胸元の防犯ブザーを指し示す。

ま、逆に網に掛けるチャンスにもなるだろうけど。と悪戯っぽく笑う。

ぽんぽん、と手を払って仲間の様子を見てまわる……。

——リレッタの周囲を赤いエンブリオが駆け回る……。