天気のよい日のことだった。

空が遠い。
と言うよりは地が近くなった、と言った方が正しいかも知れない。
見える世界が変わったような、…まあ、確かに違う世界に来たのだからそれは合っていることだが。
そのままの意味では無く——目に映る物の殆どが、自分よりも大きい。
幼少期に戻ったような、そんな気分だった。

今までと違う目線の高さに未だに馴染めないまま、私は歩を進める。
隣を歩く少女の顔を見上げると、結った髪がぴょこぴょこと元気に揺れていた。

——話に聞いていた契約者よりも、幼い。
それが彼女に初めて会った時の素直な感想だった　し、現在でもそう思っていることに変わりはない。
ただ、少々無理をしているというか、背伸びをしているというか。
もう少し我儘に、子供らしく振舞ってもよいのではないかと思うような場面が時々ある。
それを彼女が意識して行っているのか、無意識なのかはわからないが。


「——ミントっていうの。宜しくなの！ アマリアのことはマリー、って呼んでも構わないなの？」
「………うん！いいよ。」


にっこりと笑って、嬉しそうに応える。
彼女は今、新しく契約したというフェアリーと言葉を交わしていた。

嫌なら嫌だと、言えばいいのに。

ここまで来る途中で応対したことがあったのは彼女の家族、あるいは彼女より歳が上であろう者たちだけだ。
家族に関して、特に兄に対しては年相応に接していたように見えたが……。
彼女の振る舞いは同年代の子供に対しても同じなのだろうか、と少し疑問に思う。

一揆がどんなものなのか、その目的を知っているのだろうか。
ルリアンナという女性は、魔王を倒すことが目的だというようなことを言っていた。
一揆の参加者は、彼女の他にも沢山居る。
それでも、もしかしたら彼女がその王と対峙するなんてことも…有り得ないことでも、ないのでは。
そもそも一揆という行為自体が反乱であるし、王だってこの騒動を放ってはおかないだろう。
何か行動を起こす筈だ。否、既に何か起こしているか。

…だと言うのに、こんなに呑気でいいのだろうかと、朗らかな笑い声を聞きながら、私は思う。

近くに居た誰かが、大声を上げて上を指さす。
ふと気が付けば、快晴だった筈の空に陰りが出来ていた。
一雨来るか、面倒だな。そう、思った時。


「わあ…！？」
「空飛ぶお家なのー！」


彼女とフェアリーがその指先へと視線を移し、驚き混じりの歓声を上げる。
私もそれにつられて、頭上の大きな影を見上げた。

——そこには確かに、大きな家がふわふわと空中に浮かんでいた。


→タンポポ荘コミュメッセへ（微妙に）続く。

ぐりはパーティーでの戦いが終わった後、貴方に近づき話しかけてくる。

そして貴方の頭を優しく撫でた。
相変わらずの無表情だが、貴方を見つめる目はどこか優しさが宿っているようにも見える。

近づいてきた少女へ穏やかな笑みを浮かべ見下ろす。

耳にした声と足音に気付くのに時間は掛からなかった。
寄ってきたアマリアに体を向け。

「お嬢ちゃんも一揆に？」そう問おうとした声は、傍らの少女の怒号にかき消された。
今しがた綺麗と言われ、頬を染めかけた少女に。

「くわっ！」と音が付きそうな変化を見せた彼女を、わんこはどうどうと宥めるのです。

　不思議な雰囲気だとか、綺麗だとか、言われ慣れている訳もなく。
　声を掛けられたところで、少女はようやくアマリアに目を移した。

ぶんすかぶんすか手を振っている。

頭をゆーらゆーらさせて歌っていたと思ったら、
アマリアが頭を下げたのに気が付いて、頭に視線をやる。

もじもじ。

キラキラと輝く水面を見つめている。