城に向かう道中に挟まれた小休止。
握り飯にかぶりつく秋月にノームが頷く。

ノームの説明で思い浮かぶのは貴重な食料に雑草をまぶしてこねるような光景。
とてもではないがその先にどう発展していくのか地球人には想像にも及ばない概念。

食事を終えて両手を払いながら声を漏らす。
同行しているメンバーは自分以外女性、とはいえそのどれもが腕に覚えがある者達。
今のところは自分も戦力になっているが、秋月にとってそれは現状を楽観視する要因にはならなかった。

先ほど撃退したケット・シーとアメーバ。
アメーバには面食らったが核を打ち抜くように殴りつければそう手強い相手ではなかった。
それでもその戦闘中、フェリアの剣術とそなたの支援—
秋月の理解の範疇を越えた魔力を用いた戦法にから一つの不安要素は容易に見いだせた。

味方ができるということは敵もできる。技術とはそういうもの。
そして味方かどうかはさておき、ラルフに腕試しを挑まれた『同胞』の中には
秋月が相手をするには大きな体躯を有する者が数多くいた。
アニマやノームの力を借りて埒外の力を得た。
だがエンブリオの力も有能な者であればより効果的にその力は作用するだろうし、
自分がその有能な者だとは元より考えていない。

フェリアには恩を感じている。
日本語や日本人の存在を把握していた彼女がいなければ自分は途方にくれていただろう。
そんな彼女をかばい、常に先陣を切って挑み続ける。
そんなヒーローめいた楽観視が許されるほど甘い世の中ではないことぐらい、
それなりの年を積み重ねれば容易に思い至る。

妥協や諦めではなく現状を把握した上での選択肢の模索。
特別な出自も、特異な才能も持ち合わせていない自分ができる選択肢をかき集めなければ乗り切れる状況ではない。

進んでいる庭園の向こう側。陣形を固めている兵士の姿が見える。
それを見据えて秋月は拳を握りしめた。

よく見ると、青年の肩に15cm程の妖精が座っているようだ。

青年は少し考え込むような素振りを見せる。

妖精が近くに飛んできて話しかけてきた。

かけられた声——立ち止まり、怪訝な表情とともに振り向く。

訝しげな表情をしつつも、しっかりと受け答えはする。
敵意は出していないものの、かなり不審がってはいるようで。