白いカーテンが風に泳いでいる。柔らかい日差しが注ぐ広い室内で、ベルベッドの滑らかな肌触りを感じながら部屋の片隅のソファにユリアは身体を横たえていた。
　窓際で、お気に入りの揺り椅子に揺られながら針仕事をしている母。その手元をいとも興味深そうに眺める父と、二人は何か楽しそうに会話をしていた。ありふれた、いつもの光景。
　
—— 家だ。

　時間が止まってしかまったかのような、音の無い世界。思考は依然としてぼんやりとはしているものの、自分は今夢をみているのだと、それだけははっきりと感じとった。


窓枠に、金色の羽毛に包まれた一羽の鷹がとまっている。
こちら側に背を向けて、長い尾羽を床に垂らし、じっと空を見上げている。
『　飛んで行かないの…？　』
その空間に声は響かない。けれど声ではない何かで、ユリアは鷹に確かにそう問いかけていた。
ふと鷹がこちらを振り返る。
翡翠の瞳を細めて、鷹は微かに笑っているように見えた。


　風精は気まぐれである。
されど人の心に敏感で繊細な彼らは、物事の移ろいや人の心のあり方をよく見ていて、そして感じているのだそうだ。強くまっすぐ信じる心を持って、己の真理を導く時、世界のあらゆる力は精霊の加護となり私達の力になってくれるのだと、父は言っていた。
自ら目を閉じ己の両手で耳を塞ぎさえしなければ、常に傍にある彼らの声は必ず聞こえてくる。
『　よくお聞き、目を見開いて、世界を見渡せ。　』

　窓から流れ込む風がどこからか花の香りを運んで来たのか、優しい匂いが室内に薄く漂う。日差しさえ舞い上げるように、ふわりと煌めき包み込むようなそれは、少し冷たくて心地が良い。
もう少しだけ 誰も起こさないでくれれば良いなと、そんな事を考えながらユリアは夢の中で微睡んでいた。



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—— ユリア！！




　　—— ユリア！！

　そよ風に吹かれて木が枝を揺らしさわさわと音を立てている。いつの間にかうっかりうたた寝をしてしまっていたのだろう。この世界に来て初めての攻城戦を終えて、大した苦戦は強いられなかったものの疲れた身体を休めていた所だった。
　木の幹にもたれかかってまだ少しぼんやりとしているユリアの膝の上で、メゾがじっと顔を伺っている。先日契約した新たなエンブリオ（何故か今はメゾが『おまる１号』と名付けて可愛がっている）も、メゾのフードの中からもぞりと顔をだしこちらを見つめていた。そんなに長い間眠ってしまっていたのだろうか。

　（もっと早く起こしてくれれば良かったのに。）そう思いながらもゆっくりと腰を持ち上げる。さすがのメゾも、異世界に赴いて初の戦闘を終えたユリアを気遣って寝かしておいてくれていたのだろうか？とはいえしばしの休息と呼ぶにはどうやら長い時間を過ごしすぎてしまったようである。うーんと背を伸ばしながら、ユリアはまだ眠たい目をこすった。今日はまだあと少し、先へ進まなければ。


視界の片隅で、白花が揺れる。


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たのしいよヾ(◉□<)ゝ☆

金楊騎士の頭の上のアニマは、
目の点をわずかに半円にしながら忠義や何だとふんぞり返るメゾをジト目で見る。

ドールは同行者に見つからない位置からユリアを傍観している。

ドールは木陰で怪しく目を光らせ、一旦姿を眩ます。