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親愛なるお父様、お母様へ
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御機嫌よう、私とシロは順調に旅を続けておりますわ。
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健康面にも、全く問題ありませんわ。御心配、ありがとうございます。
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お父様達も、変わらず過ごしておられますか？
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そうそう……、先日、例の彼と合流致しましたの。
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事情はお伺い致しましたけれど…あの姿はどうにもなりませんのかしら？
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彼の実力や、お父様方を疑うわけではございませんけれど…
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やはり、あの姿は気になりますの。
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それと…合流したのですけれど、見知らぬ方々がたくさんいらっしゃいましたわ。
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彼が、独自で集めた方々のようでしたの。
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シロとの2人旅でしたけれど、一気に10人旅になって賑やかになりましたわ。
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これから先、何事もなく旅を続けられると良いんですけれど…。
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それではまた、お手紙致しますわ。
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お父様、お母様、御自愛くださいませ。
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　　　　ミルフィーユより
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ミルフィは新しく契約した猫の妖精…
ケット・シーに鰹節を与えながら、ふと故郷の事を思い出していた。

コロコロと喉を撫でてやると、ケット・シーは気持ちよさそうに目を細めた。
…その様子をじっと見つめる、オッドアイの瞳。

大きな尻尾をバタバタと振って、しきりにアピールするシロ。
しかしミルフィはその様子を一瞥してから、またケット・シーを撫でた。

彼女のその一言に、耳を垂れてしゅんと落ち込むシロ。

新参のケット・シーに彼女をとられたかのようで、

シロは恨めしそうにケット・シーを見つめた。

…しかし当の本猫は、全く気にする様子もなく毛づくろいをしていて。

【自分も、猫だったらなあ…】

と、ぽつりと呟いた。

その言葉を聞き逃さなかったミルフィが、
ケット・シーを撫でる手を止めて顔をあげる。

【従者が主人に構って欲しい】、などというワガママを言うような従者はまずいないだろう。
シロは記憶喪失であるとはいえ——
彼女の従者として、社交場へお供したり、
一通りの従者としての心構えは教わったつもりだ。

その言葉に、首を横に振るシロ。
全く鈍いですわね、とため息まじりに呟くミルフィ。

その言葉に、垂れていた耳と尻尾が、
ふわありと元気を取り戻したかのように膨らんでいく。

先ほどまでのしょんぼりはどこへやら、
シロは水を得た魚のように見る見るうちに明るさを取り戻していた。

フサフサの尻尾を振りながら、
今日もシロはミルフィの前を走る。

先走るシロをたしなめながら、その後をミルフィが歩いていく。

今日も、いつもと変わらぬ日常が、
過ぎていくのだろう———…。

目の前を走って行こうとした少女が、ちらっと一瞥をミルフィに投げかけ、スルーしようとして二度見して三度見した。

関係者くらいだと思っていた少女が、目当ての錬金術師だった事に、
少し驚きつつ、少女二人のやりとりをながめ、くすりと笑い。

並べた魔法道具を興味深そうにキラキラと眺め。

ぽんぽん、とミルフィの頭に軽く手を置く。

どこからかげんこつがレオに飛んでくる。

ぞろぞろと顔を出して整列する

一斉にお辞儀をした

城から進んで3日目。兵士の影がちらつく庭にて2人の前に再び現れる不細工顔の男。
今日は何やら風呂敷を背負っている。もちろん従者の荷よりは遥かに小さい。

商売人らしく和やかに挨拶を交わす。視線はちらちらと揺れる大きな荷へ。

調子よく舌を動かしながら背負った風呂敷を広げた。小さな瓶が数点、何やら香りのついた固形物も幾つか。身だしなみに気を遣う女性なら誰でも勘付くだろう、化粧品と石鹸である。

大仰に肩を落とす。若干演技がかっているが、材料不足については心底悩みの種であり。

男が名乗るキーン商会。少なくともメルンテーゼで知る者は殆どいないだろう。別世界から来たと推測するのは容易い。ただ男の世界を知る者を探そうとするとかなりの労力を要する破目になる。

2人が商品を眺めたり手に取る間、少しも笑みを崩さずに尋ねる商人であった。

長刃を振り、血を拭った。