久しぶりに、夜中に外出する機会があった。というのも一揆に参加するために、村から離れたからである。

生まれ育ったあの村では、とある信仰が行われていた。その教義によれば、太陽は実りと灯りをもたらすので生の象徴であり、その対となる月は、当然死を象徴するものとなった——ということらしい。

そのせいで、村の決まりとして、家に窓を付ける事と、夜中に外を出歩くことは固く禁じられていたのである。


僕自身、特に熱心にそれを信仰していた訳ではなかったので、外に出ることには抵抗が無かった。

けれど、今までの習慣から、外が暗くなる前に眠ろうとしていたので、あの子に

「ちょっと、一緒に外に行きましょう？涼しい風に当たりたいの」

なんて言われなければ、夜間の外出は随分と先送りになったと思う。






それにしても、月がこんなに綺麗だなんて。あの子に言われて外に出なければ一生気づかなかっただろう。

これは感謝しなければならない。けれど・・・


どうしてわざわざ僕を誘ったんだろう？　一人（？）でもよさそうなものなのに。


そのことを尋ねると、急に顔をそむけて部屋に戻ってしまった。どういうことなんだろう・・・