ブチと二人で城下町にやってきたよ！
さっきギルくんにお使いを頼まれたんだー。
お料理に使う材料が足りなかったみたい。

お料理かぁ…
…お腹空いたなぁ…

こっちに来てからお金もあんまり無くて、
お腹空いてる時間が増えた気がする。

きゅるるるる…

お腹が悲しげに訴えてくる。
町のあちこちから漂ってくる良いにおい。
このまま長居してたら、もっとお腹空いてきちゃう！

「ブチ、早くお買い物して帰ろう。
　お耳と尻尾がくっついてしんじゃうよ！」

そんな危機感を募らせながら、
ギルくんに言われたお店へ急ごうと歩を進めたとき。



「貴方様…立派なお耳の貴方様」


誰かに声を掛けられた。

「えと…立派なお耳って、僕？」
「ええ、貴方様。
　…何事かお困りのご様子…」


表通りを歩いていた僕に、暗い路地裏から囁く女性の声。
夜空のようなヴェールに身を包んだその人は
隣の店のものっぽい木箱に腰を掛けてこちらを見据えてた。


「貴方様の困り事、私には全てお見通し…」
「えっ」
「…そう、貴方様は今……極度の空腹、ではございませんか」
「！！」


夜空の布に覆われて目元しか見えないその人が
僕を見ながらにっこりと微笑んだ。ように見えた。


「私は旅の占い師でございます。貴方様のお力になり得ましょう」

そう言ってゆるやかに会釈をしたその人。
ヴェールに巻いた装飾品がシャラシャラと小さく音を立てる。


「占い師さんなの？すごいね！僕を助けてくれるの？」

思わず歩み寄ると、手を付き出して止められた。
これ以上近寄るのはダメってことみたい。


「表通りへ出て城の方角へ二店先…
　そこに広がる色とりどりの星々達…そう、それは飴玉」

？
なんだろう、急に。


「そちらで青い包の飴玉と…それから、余った金…
　……残ったお金で、買えるだけのお菓子を購入するのです」


？？


「そうして手に入れた甘い星々を、あちらの子に全てお渡しなさい」


占いっぽい事をつらつらと言い続けたその人が、不意に指さした路地裏の奥。
店の窓から漏れる明かりの下には、地面に落書きして遊んでる小さな女の子がいた。
アヒルみたいなもふもふのお尻。
ぐあーぐあー言いながら楽しそうにガリガリしてる。


「…買ったお星様…を、その子にあげたら、どうなるの？」
「自分の腹を満たすにはまず他人から、という先人の教えがございましょう」
「そうなの？」
「そうだよ。
　…購入した以上の価値のある幸いが、貴方様に訪れることでしょう」


ええと、つまり…教えて貰ったお店でお菓子を買ってあの子にあげれば
僕はもっともっとお腹いっぱいになれるって事…かなぁ。


「…早く」

ぼんやりしてたら急かされちゃった。

「うーん……うん、わかった！じゃあ行ってくるね！」


何だか良くわからないけど、
占い師さんがそうした方がいいって言うならそうしよっと！


「お菓子買ってったら、あの子喜ぶかなぁ」

路地裏を離れる前に、もう一度女の子の方を振り返ってみた。

「……」
「……！？」

…今一瞬、アヒルの子の傍に小さな妖精さんみたいな子がいたような！？
ビックリして思わず占い師さんの方を見たら
やっぱりにっこりと微笑んだ。ように見えた。


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「それでね、色んなキャンディがいーっぱいあってねー！」

城下町から戻った僕達は、マハちゃんやギルくんに今日会ったことをお話したんだ！
生まれて初めて占ってもらったこと。
生まれて初めて妖精さんを見たこと。
青い包のキャンディが一番高くて、他のお菓子はほとんど買えなかったこと。
お店を出たら占い師さんが待ってて、あの路地裏に戻るのは僕の運勢的に悪いから
代わりに渡しとくってお菓子を全部受け取ってくれたこと。


「ねーねー、今度またあのお店にみんなで行こうよー！」
「あっ、でもお肉はなかったよ！」


そんな話をしていると、ギルくんが大きくため息を吐いた。


「…それで。僕が渡したお金と、お願いした物はどこです？」



…

……

・ω・




「今日の夕飯は決まりですね」

カネちゃんが僕を見ながらにっこりと笑った。

(ふと不穏な視線を感じ)