３日目：『魔術・スペルカードについて』

魔術士の魔術には様々なものがある。
中でも、こういった場においては戦闘用のものが特に必要とされるので、アイリスが行使する魔術は都合がよいと言えた。

スペルカードとは物語を行使する魔術である。
それは必ず、逸話、神話、伝説といったものに名を残す英霊や偉人達の名を持っている。
彼らの存在を媒体に、伝承された物語を世界に転写し、広大な範囲に対して破壊効果を発現させる。
いわゆる広範囲殲滅魔術と言われるもの。

それがスペルマスターたるアイリスの行使する、本来の魔術である。
ただこれは欠点がある。
範囲が広すぎる為、微妙なさじ加減が出来ない。つまり、巻き込むのだ。範囲内なら、何もかも。
味方だろうが敵だろうが、有機物だろうが無機物だろうが、人間だろうが人外だろうが一切合財関係無く。

しかし、現在メルンテーゼではそういった事にはまだ、なっていない。
まだなっていないからとて、今後もならない保証があるわけでは無いにしても、魔術士が既に戦闘行為を行い、スペルカードを行使しているのは事実である。

本来の効果、大規模殲滅術式ではなく、限定的破壊魔術として行使されているのは。
本来有り得ないことを可能としているのは、何の要素によるものか？

それが、先述した魔銃による副産物である。