第四章プロローグ『サレップ大臣の乱』

王国より南に１５キロほど離れた植林地帯には国の資材と食材をまとめて運ぶための重要拠点がある。
しかし現在、本来であれば絶えず荷降ろしがされるはずのゲート前には審査待ちで足止めを食らうカーゴがずらりと並んでいた。
怒声が飛び交い笛が鳴る。その場にいる誰にもこの状況を変えることが出来ない事を誰もが解っているから、余計に誰もがイライラしているのだ。
この状況の大きな原因は２週間前からこの地を騒がす盗賊にあった。
規模は不明、対象は無差別。しかしここから王国までの僅かな距離で既に５回もの被害が出ているとあって、ここを含む王国南西部全域に大規模な検問がしかれたのだった。

しかしその頃、件の盗賊団は王国内にいた。
王子お目付け役の老人サレップ大臣その人が第２継承権を持つ３番目の弟王子を王にするため画策した事件であった。それが自ら毒入りの料理を口に運んだ兄王子の最後の頼みごとでもあったのだから。

だが、まだ大臣は気づいてはいなかった。サレップ大臣の双子の姉にして第１継承権を持つ兄王のお目付け役バニラの策謀がこの時既に動き出していた事を。