初めての戦いは、想像した以上に呆気なく終わりました。
どうやらこの身体は、私が思っていたよりもずっと、頑丈で、力強かったようです。
そして手に取った斧は、大きな斧は、思いの他この手に馴染みました。

振り回せば、その重みは私の身体を引っ張ろうとする。
それに応えるように引きつければ、刃は更に加速する。

その感覚は、思いの他、馴染んだものでした。少し、怖くなるくらいに。
その斧で戦ったのは、野生動物か、あるいは、王の軍勢が使役しているエンブリオのようでした。
今後も、そのような相手ばかりなのでしょうか。

　＊　＊　＊

みんなで整えた家はそれなりに快適で、住みよいものでした。
とりわけ不自由もなく機能し、ベッドは、シーツを干したばかりなのもあって、とても快適でした。
少なくとも仲間は、私の容姿について、とりわけ言及するようなこともなく、
そして私も、極力晒さないようにするにせよ、少し慣れてきました。

けれど私は改めて、この姿を確認しました。
水浴びついでのこと、おもむろに私は、自らの身体を、まるで何か物を精査するように、
検分するように、私はそれを確かめました。
何にも隠されていないこの身体は、やはり恐ろしくいびつで、人と言いがたい化け物でした。
言い訳する余地もなく、私は、私の身体は、人でない。
道行く人に、角をかわいいと褒められても。
人の姿を持たぬ人々がたくさんいて、私のことをさして奇異の目で見る人が少なくとも。
私の姿形はもはや変容し、人ではなくなっている。
それはやはり事実であり、その事実は苦しいくらいに、私の胸を締め付けるものでした。
あるいはそれは、陶酔なのかもしれません。
自らを悲劇に仕立てて、過剰に悲しんでいるのかもしれません。
この輪郭を優しく撫でてくれるのは、この冷たく無慈悲に透明な水ばかりであると、
そんな些細なことを。

そんな思考に至っても。
夜、窓から月の光が優しく差し入れる夜、私は目をつむったままに考えていました。

あいも変わらず。
やむにやまれず。

どうしたら、私は元の姿に戻れるのか。

きっと、シャントリエリ——私の身体の多くを補填するエンブリオがこの身を離れれば、
私は死んでしまう。
そのシャントリエリだって、もはや私の声に応えてくれることはありません。
シャントリエリを切り離して、アトラさんの回復魔法でこの身を癒す？
いいえきっと、そこまでの傷は癒しきれない。癒す前に、私が死んでしまう。
あるいは、人の形をしたエンブリオを調達して、その子に私を補填してもらう？
それは有効な手立てかもしれません。エンブリオの有り様はあまりにそれぞれで、
獣だったり、小さな女の子だったり、手に刻まれた模様だったり、
目に見えぬ何か——だったりします。
しかし、エンブリオは、生命力を与えることで、力を貸してくれる、と言います。
なのに、どうして、どうやってシャントリエリは、私の身体を補填してくれているのでしょう。
シャントリエリは、何か特別なエンブリオなのでしょうか。
恐らく、先ほど猫ちゃんのエンブリオと戦った通り、これからも多くのエンブリオと、
そして人と出会うでしょう。
もしかしたら、この身体をどうにかできる何かと、出会うかもしれません。

やはり私には、戦い続ける他、ないようでした。

　＊　＊　＊

翌日も、私は戦いに向かいます。
風はその香りを拾いながら、広園の草花をそよがせていきます。
そこにわずかに、血の匂いをかぎ分けながら、私達は歩きます。
安らぎと心地よさの中に、どこか嘘をかぎ分けながら、私達は進みます。

明朝の赤い光の中、黒い影が動きました。

それは兵士でした。悪しき王に味方する、人間の、兵士でした。

びっくりして逃げそこなったサニーは、異形の少女の言葉に何かを感じ立ち止まる。そして意外な言葉にびっくりする。

そう言うとなぜか、微笑んでしまう。

そういうと右手を前に差し出し笑顔を見せるのであった。

そのまま嫌がられなければ遠慮なく触ってしまう夢愛だった。指先で硬さを確かめ、掌で包むように温度を確認し、柔らかく撫でて質感を感じる。
放っておけば角の先から根本までゆっくりと愛でるように触り続けているだろう。

　
パリッ　ポリッ　パリッ