お料理をしながらほんのちょっとだけ、家のことを思い出してた。
お父さんもお母さんも仲良しで、ふつーの家庭だった。
そんな中で育った私は、やっぱりただの学生だった。
学校の友達も居たし、小さい頃からの友達も居た。
恋人とかは出来たことなかったけど、たくさんの友達と遊んだりできて楽しかった。
このまま学校を卒業して進学して、働いたり、恋愛をしたり、結婚したりして、お父さんやお母さんみたいに静かに暮らしていくんだって思ってたのに。
まさかこんな形で、ずっとぼんやり想像してた将来が崩れちゃうなんて思わなかったなぁ。

お父さん、お母さん……皆も元気にしてるかな。


なんてことを考えたりもしながら、メルンテーゼの皆を見回してみます。
ホントに、おとぎばなしやマンガの世界でしか見られないような人たちがたくさん！
半分吸血鬼のお姉さんとか、きつねさんとか、妖精さんとかエルフとか！
私のよりもかっこいー角とか羽の生えた女の子とか、ふっかふかの尻尾のある子とか……
あぁもう、全部挙げられないくらいたっくさん、素敵な人たちが居るんだ！
私が今まで見てた世界なんて、本当に狭かったんだなーって思わされちゃった。

初めて蓮華くんと会ったときの私は体の変化がひどくて結構動揺してたけど、今思えば初めて出会った人間以外の人って蓮華くんなんだよね。
今もう一度、初めて会うことができたら……
きっと私、もっと興奮してるんだろうなー。

なんてね！

そろそろこっちの食材でお料理できるみたいだし……
皆にはもちろん、蓮華くんにも食べてもらいたいな！
美味しいって言ってくれたら嬉しいなー。

少女に近寄ると、背後に控えていた異形が前に出る。
2m以上ある怪物は不躾に上から下まで観察してきた。

アムネジアはぐいぐい従者を後方へ押しやる。

懐から大小様々な宝石を取り出す。
これが私の武器なんですよ、とエステルは小さく呟いた。