「どうして…！何故あの子を助けないのですかっ！」
「……あぁ、プリケか。そんなに大声でどうした。君らしくも無い」
大きいとは決していえない部屋の中は、さまざまな器具や薬品棚で余計に狭くなっていた。
「あの子はすぐに治療すれば、死ななくて済んだのに！」
「……少し、外に出ようか」


「………どう？少しは落ち着いた？」
「えぇ。先ほどは、取り乱してしまってすいません」
患者のリハビリにも使われる広場は、今は数人の子供たちが遊びに使っているだけだった。
2人—正確には、1羽の鳥と、1羽のヒトガタのグリフォンであるが—は、広場をゆっくりと歩きながら、静かに風景を眺める。
「プリケ。君は、何のために治療行為を行っているんだい？」
「私は、あなたに……医団長に命を救われたから、生きるために……」
「そう、生きるためだ。僕たちのこの活動は『仕事』だ。慈善活動じゃない。
　あの子にはお金が無かった。だから医療行為は出来なかった」
静かに、しかし張り詰めた空気が、冷たく重たい医団長の言葉をさらに研ぎ澄ませる。
「僕が君を助けたのは、確かに僕自身の気まぐれもあるが……いや、今はいいか」

子供の声や生き物の鳴き声、風で木の葉が擦れる音…そういった音が、まるで切り取られたかのように、
2人の周りでは長い静寂が続いた。

「プリケ。君は、僕たちのこの団体の名前は、わかるよね？」
何かを思い起こすかのように、遠くを見つめながら医団長が口を開いた。
「……『黒きカラドリウス』、です」
「そう。じゃあ、その由来は、分かるかな？」
「えっ……医団長が、黒いからじゃ……」

医団長の明るい笑いが、張り詰めた空気を破る。
真空だった世界に新鮮な空気が流れ込むかのように、プリケは急に身体が軽くなるのを感じた。

「じゃあ、ちょっとその話をしようか。はじめに言っておくと、この団体を作ったのは僕じゃない。
　だけど、そのまえに、場所を変えようか。他のヒトにはあまり聞かれたくないし」

2人はふたたび、室内へと戻っていった


……………

………

……


あまりに心地がよく、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
私は身体を起こすと、川で顔を洗い、静かに床に戻った。
もう1度眠るには時間が足りないが、同行者を起こすにはまだ早い。
夢で見た昔の話を思い出しながら、私は静かにペンを取った。


Subject:成果報告 3日目

ネクターさえあれば、私のような部外者、この世界の一揆に対して強い気持ちを持たない者であっても、
エンブリオと契約、使役することが可能であることが判明した。

本日は平原へと赴く。
話によると、キラーウルフという狼とも契約できるらしいのだが、一瞬姿を見せただけですぐに行方を眩ませてしまった。

川にいたレモラという魚は美味しかった。

色濃い者達のパーティに紛れ込めたのはいいけれど、一癖も二癖もある者ばかりで、

……いや、これはこれで、なかなか楽しめるかもしれない。

トゥバンに触ろうと手を伸ばす

声を掛けられると何故か辺りを見渡し始め、ようやく自分の事だと気付くと人差し指を自分に向ける。

クイトが話をしている間、ハディートは考え込むように黙っていた。

＞ふいに眺めていた相手から声をかけられ少し飛び上がる。

＞驚きと、人見知りで挙動不審になるも、お辞儀をする。
お嬢さんと呼ばれたことには気づいていないようだ。

＞自己紹介を返しながら、うっかりもう一度お辞儀をする。

＞相手の視線を追うように、自分を見つめると、はふ…と溜め息をもらす。

＞歳相応、もしくはそれ以上に先への不安が濃いようだ。泣きそうな顔をしている…。

そこに、とても小柄な女の子がやってきたようだ。

　水辺で、唐突に声を掛けられました。首を傾げた少女は、
なんとも無防備な感じの表情で尋ねてきます。

　わたしのかみみたいに？そう続けて。見れば随分けったいな癖っ毛の持ち主でした。
ただ純粋に気になったから聞いたみたいです。