「お…こんな所にこんなもんが……」
襲ってきたケットシーを撃退して一息ついてるとシャラが屈んで足元の草を引き抜いた。
引き抜いた草を一瞥して頷けば再び歩き出す。
一連の行動を見ていた陸月は同じように足元の草を引き抜いてじっと見つめる。が、どうみてもただの草にしか見えない。
「ねえシャラさーん」
「シャラ様と呼べ」
陸月の問い掛けにシャラは振り向くと鋭い瞳を更に鋭くして睨みつけた。ビクッとする史乃を傍目に当の陸月本人はあまり気にしてないのか、少し考えてから
「シャラ様さん」
と、素っ頓狂な言い回しで呼び出した。
流石に面食らったのかシャラは何も返さず、溜め息一つだけ吐いた。
「この草とその草何が違うのー？」
自分のとシャラのを見比べながら訪ねる陸月にシャラは自分の草を千切ってわたした。
「食べ比べたらわかる」
そう告げられれば食べない訳にもいかず、陸月はまず渡された草を食べる。
「ん、美味しい！」
予想外に美味しい草に気分をよくしたのか、自分の草も勢いよく口に放り込みゆっくり噛んでいく。
が、その表情はみるみる苦いモノになっていく。
「青汁が濃縮したみたいな味がする…」
なんとか飲み込めばすっかり意気消沈した声色で呟いた。そんな陸月の様子にシャラは楽しそうに声を出して笑う。
「この草たちは見た目が微妙に違うけど、味は雲泥の差でな」
「そーみたいッスね…」
うえっと声をもらしながら陸月が頷く脇でずっと黙っていた史乃が急にしゃがんで周辺の草をじっと見つめる。
しゃがんだ拍子に零れた紙を拾い上げながら陸月も、そしてシャラもその様子を伺っていた。
「これかな…」
呟きながら草を引き抜いてゆっくりと立ち上がる。
「すげーシノさん違いわかんの！？」
「魔法植物とかも好きだからねえ」
陸月はきらきらした目で史乃を見ながら、口直しにとその草を少し分けてもらう。
「………」
にこにこ顔で草を食べる様子をシャラは黙ってみていた。
しばらくして陸月の顔が苦くなれば、史乃はあれっと首を傾げて頭をかいた。
「それも間違いなく美味しくないヤツだよ」
肩を震わせながらシャラはそう言った。史乃が草を手にした時から気付いてはいたがあえて黙っていたのだ。
結局口直しも出来なかった陸月は肩を落とし、史乃はそんな彼にごめんねと謝る。
「まあ素人にはなかなか難しいだろう。ほら、こっちに川があるみたいだから行くぞ」
面白いモノがみれたとご満悦な様子でシャラは再び歩き出す。
２人も慌ててその後についていくのだった。