ラルフとの腕試しのあと、そんな風に半ば無理矢理他の冒険者と引き合わされ小隊を組むことになった。

紹介されたのは妖精の少女と甲冑姿の女性、そしてキモノの大男と男に寄り添うゴシックドレスを纏った少女だった。女性と大男が現地人のようで妖精の少女はレンツと同じ異世界から来たようだ。
引き合わされた四人は誰とはなしに名前と軽い自己紹介を始める。ぴか、シュシュリ、カメルにツユ。彼らの名前と特技——言うまでもなく一発芸のことではない。この場合は戦う者として何が出来るかという意味だ——を半年前には感じなかった頭痛と引き換えに、一文字一句間違えず一瞬で記憶する。

今後このメンバーで一揆軍としての行動を、苦楽を共にする。——二年前の、冒険者となったあの日のように。
そう思った自分の心に、高揚のような何か沸き上がるモノを感じた。
現地人の彼らには不謹慎かもしれない。それでも抑えきれない、冒険者としての熱を。
願わくば、それぞれがこの旅で、何かかけがえのないものを見付けられますように。青年は心の中で小さく、そう祈った。

新しい仲間に一声かけ、赤毛の少女を追いかける。この世界に来たもう一つの理由を問うために。

「あぁ。俺がそれなんだよ。フェイカー、死んじゃう系。だから治療法探してんだ。あははははは。」

そんな言葉をぎりぎりのところで抑え込んだ。死んじゃう系と評された人間が目の前にいて、喜ぶ人間などいるはずがない。

今この世界（メルンテーゼ）にいるのは、この世界の住人だけではない。だから他でもない、この世界に来たのだ。

あるかないかの二択だけの天秤に世界を渡るリスクを賭けるには大きすぎる。

赤毛の少女は隻眼の大男を連れ、去って行った。

結局最初の可能性は簡単に潰えてしまった。
元より期待はしていないものの、それまでかけた時間が全て無駄となったことには間違いない。

しかしだからこそ立ち止まる訳にはいかない。——ここに来たという、生きる意志が消え去るまで。

——あまりにも当然の展開に震えた声を出しながらサッと物陰に隠れれる、その物陰からチラっと顔を覗かせ。

——成るべく穏便に済ませるように最大限に配慮された声。明らかに警戒心を持たれてるのが行動や言質から伝わってくる。　大笑いする青年と怯える少女。その温度差はまさに氷と炎に近しいと言えるだろう。　お腹はむろんぺっこぺこであるが……受けとる訳には……否受け取りに"行く"ことが出来ずに……

　
　銀髪の青年の急な接近に、少年はさっと一歩前に出た。
　もちろん、翼の少女をその背に隠すようにして。
　

　
　そして、がしゃり、と音を立てながら左腕を上げる。
　同時に、手首部分から内側にスライドし、腕側から銃口が現れた。
　

　
　そう言って、ロウは不機嫌そうに外方を向いた。