★第二週　重要なのはフリル

これは一揆の始まる前の、街のお祭を控えた話。



ティシアは今日も一人もくもくと新しい人形を作っていた。
フリルをふんだんに使った赤と白の人形。

『またフリル？』

ずらりとひな壇の様に並べられた、今まで作られた人形たちとは別に、アンティークな椅子に腰かけた人形が一体。

今の発言はこの人形・エレアナから。

『ちょっと聞いてる？』

「…あ、ごめん。…なに？」

二言目でやっと声を掛けられたことに気づくティシア。
それほど集中していた様だ。

『またフリルかって聞いてるの。』

その言葉にまばたき一つ。
きょとんという擬音が似合う。

「…うん。だって、可愛いし。…ここ、リボンつけたら良さそう。」

仮止めされたリボンを当てて試している。
そんな様子を見て溜息の音。

「エレアナにもつけてあげようか？」

小首を傾げて訪ねてみる。
先ほどの質問に自身にもつけて欲しいのかと勘違いしたらしい。

『間に合ってます。』

言葉で押しのける。
そっかー。と少し寂しそうに言いながらも作業を続行し始めた。

『そういえば今度の街のお祭、準備はもうできてるの？』

「もちろん。タイトルは”燃え盛るドラゴン”」

どこかで聞いたことありそうなタイトルでキリッとエレアナに向き直るが

『何それ似合わない。』

スパっと切られた。

『え、ちょっと、それ本気でじゃないわよね？』

「…本気なわけ、ないよ…もちろん他にもあるし。」

少し目線を落として作業に戻ったあたり、
あ。本気だったんだな。と思った瞬間だった。
練り直しである。

「…できた。」

出来たてのフリル満点な可愛らしい人形を、自分の顔より少し上に抱き上げてやり残しが無いか確かめる。
主に赤を主要とした、白いフリルとリボンに赤い帽子をかぶせた人形を見てひらめく。

「そうだ赤ずきんにしよう。」

『え、今思いついたの？』

「次、エレアナの服。」

『まだ作る気なの？もう寝たら？』

「気になって眠れない」

こうなったら止められない。
誰か彼女を止めてくれる人は現れないのか心で悩む人形でした。

★第二週　終

ちょっとした小話でした。

　　　　　　静かにはたきを構え

　　　　　　襟元を正しながら周囲を窺い

*何かを発見して嬉しそうだ*