ラルフと名乗った男の突進を弾いて逸らす。
幾許かの衝撃は残るがさしたるダメージを受けるわけではない。

と彼は戦いの中で思考する。
数えて9番目の模擬戦闘、力試し、腕試し。
加えて後に控える一揆参戦者達。
実際に眼前の大男、ラルフと戦うのは代表者——エンブリオと契約し名を登録した者たちだけだが、その数はゆうに2000を越す。
とても全てを本気で捌ける数とも思えず、事実、手加減なしと言いながらも向こうは力をセーブしていることは明らかなのだが。

今度はかすらせることなく回避。
自らの足捌きに慣れないのか少しばかりたたらを踏むが、すぐに体勢を立て直した。

こめつぶたちの野次に苦笑。自分が強くなったのか相手が弱くなったのか、推測は後回しでいいだろう。
9番目の参戦者として登録した彼は、契約したエンブリオことこめつぶたちの力を借りて、このような強さを得ている。今はこの現状認識だけでなんとかするしかないのだ。

距離を取り、契約によって得た力を試す。

一定以上の本気を出さねば効果がわからない『スキル』、見知った体系とは大きく異なる戦闘技術を用い、その身に知識と経験を叩き込む。

好き勝手なこめつぶたちの声援だがそこには事実も含まれている。
この模擬戦闘、終わりが近い。
ラルフが笑った気がした。
気のせいかもしれない。
しかし構えを変えたのはわかる。
これは腕試しだと自らに言い聞かせ、今の強さにちょっぴり感謝しながら、零落も構えを変える。

タックル！！
零落とこめつぶたちに 86 のダメージ！


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最後の最後でだいぶみっともない姿を晒してしまいましたが、幸いにもラルフさんはノーカンとしてくれたらしいです。
この世界での戦闘は、大きなダメージを食らっても最後にもう一手動けるというのが『ルール』のようです。異世界間での行動法則齟齬、文献でしか知らなかったので勉強になります。というかどういう理屈なのか気になりますが、そういうルールだとして割り切るしかなさそうですね。
それで、ラルフさんたちに認められ一揆参戦者としての登録を終え、一揆についてもう少し詳しく聞いてみたのですが、どうやらこの世界では一揆そのもののルールも私たちの知る一揆とはだいぶ違っているみたいです。
簡単に言うと、戦争とかではなくて、新王側体制の送り出してくる陣営と、私達一揆参戦者による陣取り合戦、のような。あまり戦争とかいくさという雰囲気は感じられませんでした。
登録した者を1人として、最大4人でチームを組めるらしいです。闘技場での競技戦闘が基本、と考えて良いと思います。
それと、情報収集していた時に知り合ったジェイさんの紹介で、私もチームを組むことになりました。
このあたりの多くの世界では男女の別け隔てなく戦闘に参加するようで、登録した4人中、2名が女性でした。
異文化衝撃です。
あと、毎日、明日の戦闘エリアを予め決めておかなければいけないらしいです。事前申請や登録が多く、まるで何かのゲームをやっているような気分になりました。

話しかけられた瞬間、びくり、と身を強張らせた。
異国語で話しかけられる事自体に驚いたり、慌てふためいたりと行った事はしないが、相手の風貌をまじまじと見つめるように、ヘルメットやフェイスマスクのようなもの、また相手の目線が己の何処に向いたり、という様子をじっと観察するように見つめていた。
言葉が、通じない分、相手の動作や声質、恰好にどうしても意識が向く。

頭を深く相手に下げる。何かを、詫びるときの仕草に似ている。
頭を下げたまま、ぽつりともう一言呟いた、が。
ついでに先ほどまで相手が目線を向けていた箇所、スカートやら足やらの辺りに手を伸ばし。スカートの裾を引っ張って、何処か隠すような、動きを。無論生地は伸びたりはしない為、そんな動きで隠れたりはしないが。

話しかけられた子供は、じっとあなたを見返します。
なにか、フードの下でモゾモゾと動いたような気もしますが、気のせいかもしれません。

そう言って、子供は、じっとあなたを見上げます。

ぺこり、と頭を下げました。

尻尾膨らませて、2m飛び上がって、緊張で瞳孔真っ黒に広がった目でじーーーっと見詰めてます。
なんだかとっても警戒心マックス☆

男は右に、左に視線を投げかけ、やや間を置いた後、ようやく声をかけられたのが自分だと理解したのか、目の前の人物へと向く。
口を開き、決して聞き取りやすくはない声で男は言う。

どうやらここに住む者ではないと言いたい様だ。
長いこと旅をしてきたようなくたびれた衣装の間から力なく腕を下げ、やや猫背の男は続ける。

片言で続けられる言葉。
何か知っていたとしても、正確な情報を聞き出すには骨が折れるかもしれない。

　　　

　　　　羽織ったローブのフードを深く被り、大鎌を手にし対峙する。
　　　　　　うっすら、彼女の周りを薄い霧が漂っている様に見える。

　　　　
　　　　　張り詰めた空気が解けると、手にした大鎌は白霧となり辺りに霧散して消えた。

　　　

　　　　羽織ったローブのフードを深く被り、大鎌を手にし対峙する。
　　　　　　うっすら、彼女の周りを薄い霧が漂っている様に見える。