ラルフさんと戦った後のこと——————



















ゴシャッ





五木の体が妄想とともにふっとんで、頭から落下した。

路地裏に老人の怒声に満ち、反響する。それがわんわんと響き、打ったばかりの頭を揺らした。
ぶつけたところを触ってみると血が流れていた。
先程行ったラルフとの手合せでも血を流すような傷は負わなかったのに。

恨めしげな視線を送るも老人に苦言を呈することはなく、大人しく正座をする。
地面がごつごつとしていて膝が痛い。

無意識に小さく舌打ちをする。すかさず老人の拳が脳天に突き刺さった。

全然わかっていないが何とか声を絞り出して、ハイと返事をする。
長らく人と話していなかったため、声の出し方を忘れていた。
返事をしたから文句はあるまい。

老人は苛ついた表情で盛大なため息をつき、二度目の説明をし始めた。

あの素晴らしいご夫婦からこんなクソが生まれるなんて、世の中は残酷なものだと老人はぼやく。
そんな声も耳に入らない様子で、五木は呆然と地面を眺めた。

全然、知らなかった。
一揆が起きているのも知らなかったし、なぜそんなことになっているのかも知らなかった。
王が代替わりをしているのも知らなかった。
いや、そんなことは割とどうでもよくて。
家族が、親族がすべて死んでいることもまったく知らなかった。
誰かしら教えてくれようとしたのだろうが、五木は知ろうともしなかった。

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以上が五木が一揆に参加するに至った流れである。


老人と別れて路地裏を抜けて、五木が向かった先は星屑の小川である。
ホームレスの居場所として橋の下は鉄板だろう。
拾った木材や瓦礫やらを用いて、小さく簡素なバリケードのようなものを形成し、小さく丸まり寝転がる。
すっかり日も暮れてしまい、星空がちかちかと瞬く。
美しい夜空ではあるが五木の目には入らない。
無感動に空を眺めながらその日を思い返す。

※ご近所だった葦高さんです。

バサバサバササッ———
突然の鳥の羽音とともに視界が一気に上空へと移る

あ、これは違う。と、判断したのか…
ふいに五木をつかんでいた爪が緩む

建造物の影、蠢く黒光りが視野に入った

未知なるものとの遭遇！
2ｍ近いアレを見つけてしまった…