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我が愛しの娘、ミルフィーユへ
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旅は順調かね？
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どこか怪我をしていたり、辛い目に遭ってはいないだろうね？
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キチンと食事をし、睡眠をとれているかね？
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ああ、私はミルフィーユが旅立ってからというもの、
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四六時中、一秒一刻たりともお前の事ばかりが頭に過るのだ。
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いつでも、母には内緒で帰ってくると良い。私は待っているぞ。
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そうだ、既に合流済みかもしれぬが、事前に伝えていた通り
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昔世話になっていた傭兵団団長の息子を、お前の護衛として呼んでおいた。
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お前はまだ小さかったから、あまり記憶にないかもしれないが、
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よく、お前の相手をしてくれていた【渡来 葉月】君だ。
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護衛のシロがついているとはいえ、シロも女性だ。
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女二人旅では、何かと心許なかったのでお前の護衛にと頼んでおいた。
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彼の父同様、腕は立つはずだ。
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彼の事情については、掻い摘んで説明した通りだよ。
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仲良くしてやってくれ。
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いや、しかし、くれぐれも　仲良くしすぎるんじゃないぞ。
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パパはいつでもお前の身を案じているからな。
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　　　　　　　愛をこめて　　パパより
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質の良い便箋に綴られた、見慣れた父の筆跡。
まるでとても長い間旅をしていたかのような、故郷への懐かしさを覚えながら、
一文字一文字を追い、読み終えて一息つく。

ふわりと、便箋から懐かしい我が家の香りが漂ったような気がした。

ふふん、と得意げに鼻を鳴らすと、
目の前に傅いていた父の使いが顔を上げた。

母の命令で旅に出てからというもの、
どうやって現在地を特定しているのかは不明ではあるのだが、
こうして定期的に両親の(主に父の)使いとして、従者が書筒を届けにやってくる。

傍から見れば、なんと過保護なことかと思われそうではあるが、
彼女からしてみればそれは当たり前の愛情だ。
何の疑問も持たず、彼女は親愛なる父への返事を書く。

ミルフィーユの手紙を恭しく受け取った従者は、
挨拶もそこそこにそそくさと帰って行った。

……もたもたしていると、彼女の返事を待ちくたびれている父に苦言を呈されるからだ。
小さくなる従者の背を、ぼうっと見つめながら物思いに耽る。

チラリと、合流したばかりの「仲間」を見やる。
昔の、うろ覚えではあるけれども——確かに記憶の中の面影が残る、渡来葉月。

——そしてその近くに集まるのは。

【身体に不釣り合いな大剣を持つ少女】、
【同じ顔を持つ姉妹】、
【シロとは違う獣の耳を持つ女性】、
【巨大なハンマーを持つ、女性のような男性のような、どちらかわからない長身のヒト】、
【まるで鬼神のような(…鬼なのかしら？)巨大な男性】、
【何だか気弱そうな、燕尾服を身に纏った女の子】……。

なるほど、事前に話には聞いていたが、
実際会ってみると彼の子どものようなその姿に驚いた。

己の力だけでは厳しいと思ったのだろうか？
独自に人を集めたというなら納得はできる、かもしれない。
実際、鬼神のようなあの男性ならば戦闘能力は高いのだろう。

傭兵団の中に女性がいることは、良くあることだ。
しかし、どう見ても傭兵団とは無縁そうな女性が多く見受けられる。

そう言いながら、しゅんと項垂れたシロを後目にスタスタと、
皆のところへ歩いていくミルフィーユ。

大きな荷物を背負って、慌ててついていく従者のシロ。


果たして、この旅の果てに何が待っているのだろうか。
彼女らの冒険は、まだまだ始まったばかりだ———————。






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葉月は眼鏡を拭いている。

渡来氏含め、
集結したメンバーを一瞥してからミルフィーユは前に歩み出た。

（時を遡ること数分前、あなた達がこの一糸まとわぬ姿の青年に出会うほんの少し前のこと。
まぁ数分前と言っても青年は変わらず衣類を着ておらず全裸であることは変わらないのだが、どうやら何かを探している様子だ。）

（そこに飛び出してきたのが犬耳のあなたであり、金髪のあなただった。
まず初めに現れた少女のはしゃぐという反応に初動が遅れる青年。しかしそれは“全裸の異性を前にしてはしゃぐ年頃の娘”という存在に驚いたのではない、単にその耳に注意が向いただけだった。）
（注意が逸れた、遅れてしまった。いや、たとえもしここで金髪の少女——少なくとも全裸の異性を前にして相応の対応が出来る——のほうに気を向けていたとしても防げなかったと思うが。顔をあげるあなたと注意の対象を変更する青年。そして目が合ってしまった合った二人の間に産まれる奇跡、ではなくあなたの叫び。シャウト。）

（かろうじで理解出来たあなたの全身全霊の叫びと自身の“服装”からようやく全てを理解した青年。しかし青年は冷静だった。
同じぐらいの歳の異性を前にして全裸でいることをはしゃぐことはないが、二年前ならば確かに取り乱したであろう。
——だが、数多の同じような経験が青年を強くしていた。）

（このように二人のやり取り——金髪の少女が一方的に主張をしている——を聞き流しながら、思いを馳せたり出来るほどに成長したのだ！ちなみに余談だが今思い浮かべた花梨嬢は彼と知り合って一年以上も経っていながら、未だに青年の半径3m以内に近寄ることが出来ない。）

（ってことで、俺の服見てねェ？
首から上だけならば第一印象もそう悪くならない笑顔を浮かべ、銀髪の青年は一歩近づきながらそう聞き返した。）

やや遠巻きに貴女の持つ鎌を見ている男が一人。

じー、っと熱意の籠った視線を鎌に向けている姿は、些か狂気の沙汰の様に見えるかもしれない。

パーティから離れ、一人の少女があなたに話しかけてくる。

そして、話しかけてきた少女は犬耳の少女に興味があるようだ。

鎌なのかクワなのかよくわからない大鎌を持った少女が、とてとてと近づいてくる。
火の妖精と思われる熱気を放った妖精も隣にいる。

長刃を振り、血を拭った。

片手でスカートの裾をつまみ、恭しく一礼。