この砂はみんな水晶だ、中で小さな火が燃えている。


連峰のようにも見える、連なり続いている王城の城壁、そこから流れてくる一筋の小川。
透明度の高い澄んだ小川の水底で、その流れを一際煌めかせる夜空の星のような砂粒に、
白い少女はそんな物語の一節を思い出していました。
自分の名前も忘れた彼女でしたが、そのような物語の断片の記憶が所々に残っていました。

それは、かつて本で読んだものだったのか。
あるいは、誰かから語り聞かされたものだったのか。
今の彼女には、知る由もありません。


　+ + +


先日、一揆を企てる革命軍の一員として迎えられた彼女でしたが、
彼女にとってそんな話はどうでもよく、ただ、この世界に召喚されて最初に出会ったのが、
革命軍側の参謀の女だったという、ただそれだけの話でした。
そういった意味では、国王軍側に組し、冒険者たちに仇を成す存在となっていても不思議はありませんでした。
もっとも、今の彼女にこの世界で起きている事情を理解するだけの知識も感情もなく、
革命軍側にとっても、ただ『敵ではない』だけの存在に過ぎないのですけれども。

ただあてもなく小川の辺をふらふらと彷徨っていた彼女ですが、
魔物も少なくない場所を武器らしい武器も持たずに歩いている様は、大層危なっかしく映ったのかもしれません。
そんな様子を見かねてか、とても背の高い女の人から声をかけられました。

それは、仲間という概念をまだ理解していない彼女に、初めて仲間ができた瞬間でした。

視線には視線。

すぐに気付いた女の子は、あなたをじっと見返します。
どういうつもりなのか、分からないとばかりに、不思議そうに首をかしげて。

先に痺れを切らしたのは、フードの女の子です。
人間とはちがう、雰囲気とすがたより、じっと見つめる視線の方が、気になっているようです。

そうたずねてから、少し考えて、思いなおしたように口を開きます。

2人は少女の姿に気づいたようです。妖精の方は気づくや否や、少しずつふよふよと近づきながら声をかけてきました。

「素敵なお友達に会えた！」と思っているのでしょうか。妖精は嬉しそうに微笑みながら、こちらに手招きしています。

人間の方はと言うと、不思議そうにこちらの様子をうかがっています。警戒…と言うよりは、雰囲気と外見のギャップに対する驚きや関心といった感情でしょうか。　敵意は無いようです。

ふと鎌を出すころを見て鎌のキレイさにも、
どこから生えてきたのかも気になって寄っていくもふもふの塊

こちらはこちらで炎の服からずるりと鎌のようなものを取り出してみたり

びくっとして防犯ブザーに手をかけますが、それが女の子であることに気付いてすんでのところで手を止めます。

とりあえず自己紹介から。

ぬいぐるみは何も応えない。
かわりに、隣に立っていた少女が応える。

少女はぬいぐるみを抱き上げ、怪訝そうな表情で首をかしげる。

クマから白い女の子に向き直り、じっと見つめる。

フルートの音が聞こえる…