「よぉし、いいだろう。ぜひ俺達の力になってくれ！」

「まったく・・・ようやく仕事の話か」

構えを解いて拍手を送るラルフを横目に、自分も構えを解き、巨大な飴玉を肩に担ぐ。

「うん、いい線いってる！・・・・・よね？ラルフ？」

いままで何処にいたのか解らないが、唐突にルリアンナが顔を出した。

「おう！これだけ動ければ大丈夫だろう。心強い限りだ、よろしく頼む！」

「これだけ動ければって、あんたのタックル全部受けてる相手に言う言葉じゃないと思わない？」

「煩いぞ、ラゼル」

はいこれっと渡されたネクターを預かり、ようやく仕事の説明かと少しほっとした。
失敗なら失敗で構わないのだが、ここまで来るのに雀の涙程度の前金は既に使い切っているし、全額頂いてるなら兎も角、割りに合わない額で引き上げるのも面白くない。
もっとも、引き上げる為の金も、既に持ち合わせてないのだが。

「よぉしそれじゃ行ってらっしゃい！バックアップは黙って私に任せんしゃいっ！！パパの行動力とママの分析力を兼ね合わせたプレミアムブレンドガールに死角はないわッ！！」

「あぁ、どうやら両親共にコミュニケーション能力には問題があるみたいだな。なんの説明もなく行ける訳ないだろう」

「明らかに親父の血が濃そうだが・・・・・少しは母親の大人しさが欲しかっ・・・」

「黙れおっさん。さぁ次いくからねッ！！魔王パラダイス討伐への道は険しいのだ！！ 」

俺はお前らの漫才を見る為にここに来たんじゃねーんだと頭を抱えるも、当の本人達の話しは続く。

「黙れおっさん。さぁ次いくからねッ！！魔王パラダイス討伐への道は険しいのだ！！」

「王のこと魔王って言うの、やめねぇか・・・？」

「パラダイスってほんとフザけた名前よね！！あ、魔王城には厄介な奴らがいっぱいいるからね！なるべく誰かと一緒に進むようにしたほうがいいわよ！！あとこれ支給品！がんばってね！！」

満面の笑みで至急品を差し出すルリアンナから品を受け取りながら、これを売っぱらえば酒代にはなるか？考えていると、休もうとしているラルフをガン無視し、ルリアンナが引きずる様な形で二人は去って行った。

「見事になんの説明もなかったわね」

白猫のラゼルが肩に飛び乗る。

「最悪だな・・・ラゼル、何か解るか？」

軽いため息の後に「そんなにあれこれ知ってる訳ないじゃない。少しは自分で動きなさい」と言いつつも、軽く考える素振りを見せながら説明に入る。
少なくても、飴造より情報を持っている事は街間違いないのだ。

「さっきも言ったから軽く省くけど、ここはメルンテーゼで、アンタがさっき受け取った紅い花びらがネクターね。力を認めた者に対して契約を受け入れるって話しだから、ぼこぼこに打ん殴って口の中にでも詰め込めば良いんじゃない？あぁそれと、元々使える魔力が少ないから気が付いてないでしょうけど、アンタの魔力使えないから。ここじゃエンブリオの魔力を借りないと魔術系は扱えないみたいね。もっとも、私が何故エンブリオに分類されてるかは知らないけどね。そんな訳で、常に私に感謝を忘れずに崇め奉って、私の願いを全て叶えなさい」

「馬鹿な事言ってないで、知ってる事を全部吐け」

そんな物言いだと、魔力貸してあげないわよと言いつつも説明を続ける。

「この世界でも魔術を使えるのに、魔力の供給源を考えれば、エンブリオと契約するためのネクターがどれだけ貴重な品か解るわよね。この間、この世界の王様が交代したらしいわよ？そしてネクターの独占をしたんですって。不満を持たれて攻め込まれる前に、武器になりそうな品を取り上げたって所ね。どんだけ自信がないんだか。ただのチキンね。国民はその行為に反発。傭兵雇って攻め込もうって話しよ」

「つまり、王を殺害する為に人を集め、自分達が手を下した時に下手人を特定させない為に人を集めたって事か・・ふん、馬鹿馬鹿しい」

巨大な飴玉を、ラゼルに当てない様に気をつけて担ぎ直し、歩きだす。

「ちょっと、何処に行くのよ？まさか王を殺して頂くもの頂いてトンズラかまそうなんて思ってないでしょうね？」

「魔力が使えないのにそんな真似が出来るか。もっとも、残念な事に元々そんな強くないしな。人が集まってるならそいつらがどうにかするだろ。俺は寝不足なんだ」

「私、野宿は嫌よ」

「・・・」