〜前回のあらすじ〜

剛拳のラルフさんは小学1年生のモップ二撃で沈みました。

第一話　出逢いとは


「まったく、ひどい目にあったですよ…」

なんやかんやで流されるまま、謎のマッチョメンを撃退した苺香。
ネクターとかいう謎のアイテムを貰って、解放されます。
マッチョメンは頭にコブを残したまま、もう一人いた女性に引っ張られて去っていきました。

「うふふ、さっそくのたたかい、うまくやったみたいね？」

くるん、と苺香の頭上を一回転するアノ。
(あっさりマッチョメンが倒れてしまったせいで)彼女の活躍はありませんでした。

「マイカもなかなかやるねー？」

同じくくるん、と飛行するララ。
頭上でくるくる回られて、苺香はすこしうざったそうにします。

「あんなでっかい人がそう簡単にやられるはずねーですよ…たぶん、手加減とかしやがってるはずです」

まったく手応えのなかった先の戦闘を思い返し、苺香は言います。
その予測が当たってるかどうかは……本人たちに聞いてみないことにはわかりません。

「っていうか、これからオレはどーすればいいですか。なんかなりゆきで変なイベントに参加するハメになりそーですよ？」
「なりそう、じゃなくてもうなってそうだけどねー？」
「そ、そんなあっさり言いやがってです…」

お気楽な姉の言葉に、苺香はがっくりとうなだれます。
元の世界に戻してくれそうな様子は、まったくありません。

「そうね…あたしたちがぼうけんしたときは、さいしょはどうだったかしら？」
「うちっちは途中からおかーさんについてっただけだからー、さいしょはよくわかんないなー？」

そんな苺香のことはどこ吹く風、ララとアノはわいわいと自分たちの冒険トークを始めました。

「うーん、おかーさんはさいしょは…？」
「あ、そうよ、なかまあつめ！」
「仲間集め……です？」

ぽん、と両手を軽く合わせるアノに、苺香は尋ねます。

「やっぱりひとりじゃぼうけんってできないと思うの。たよれるなかまをみつけないとね？」
「そうそう、おかーさんもなかまといっしょに、強くなっていったみたいだよ！」

姉二人の言葉を受けて、苺香は周りを見回します。

「仲間……っていっても、です」

先ほどよりはいくぶんまばらになっていますが、苺香と同様にマッチョメンとのバトルをこなした人々が、そこかしこにいました。

「そんなの、どうやって探したらいーんですか」

ただでさえ知らない世界、見知らぬ人々、その上集う人々はよくわからない異種族ばかり。
この中からどうやって、一緒に行く仲間を探すと言うのでしょう。
(先ほどのマッチョメンたちは大丈夫でしたが)まず言葉が通じるかもあやしいものです。

「うーん……」
「んー……？」

問われた姉二人は考えます。

「ノリ、で？」
「フィーリング…かしら？」

全く参考にならねーです。
苺香は少し顔を引きつらせました。

「てゆーか、姉ちゃんたち二人がいんじゃねーですか。姉ちゃんたちも冒険してきたことがあるってなら、仲間とか無理に探さなくても十分なんじゃねーですか？」
「あら、だめよ」

当然といえば当然の問いに、アノは首を横に振りました。

「せっかくのぼうけんなんですもの。ちゃんとやることは、じゅんばんにこなしていかないと」
「うちっちたちは、あくまでかんしやくー」

お姉さん風を吹かせているつもりなのでしょう。
ちょっぴりドヤ顔になって、二人はそう言いました。

「できるだけ一人でやらないとだめだよ？本当に危ないときくらいはたすけるかもだけどー」
「うふふ、気がむいたらね？」

どうやら姉二人は、仲間としてはとても頼れそうにありません。

しかし、実際知らない世界で冒険(するしかないのでしょう)するには、助けになってくれる人の存在は不可欠です。
できれば、この世界のことをよく知っている人が望ましいでしょう。
今の苺香は知る由もありませんが、この集まりには、苺香と同じように異世界からやってきた人も少なくないのですから。

苺香は少し諦めたような表情をして、改めて周囲の人ごみを見回しました。
異種族らしき人も多いですが、一見普通の人間と見れる人もそれなりにいます。

「んー…まずは、とりあえず声をかえやすそーな人から、です」

きょろきょろしながら人の群れへ向かう苺香。
そんな苺香の方に忍び寄る……謎の影がありました。
何やら酒臭さをも漂わせている、その影の正体とは！


あとはEno. 1335 エシャロットの日記に続くと思います(丸投げ)。

通りを歩いていると、視線を感じました。
小さい女の子が、足を止めて、すこし不思議そうな顔で、あなたを見ています。

なぜかちょっと嬉しそうな顔。
そして、てくてくと近づいてきます。

ちょっといきおい込んで話しかけてしまったようで、恥かしそうにフードをかぶりなおします。

平原とはいえ人が密集していれば肩ぐらいぶつかるものである。
ぶつかった少女は苺花を見つめた。

（剣から無数の血管が腕に延びるようなおぞましい錯覚）