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『かーこ、応答せよ、かーこっ！
　何ぃ？ちゅんたとはぐれただとぅ！？何やってんのぉ！』

「……マスター、なにやってるですの。
　別れてから、まだ数分しか経過してないですの。」
『なーに、ちゅんた。ははぁーん。もしかしてかーこと……？』
「何もしてないですの！もー、違うですの！！
　いつもの展開なら、あのまま放置されてもおかしくないからですの。」
「うんうん、それはよくあるなー。」
『いやまぁ、今回はあれよ。通信テストとかメンテとかも兼ねてるからっ。』
「通信って、まだ目的地に着いてないですの。」
『ここ【転送空間内】の話よ。
　異世界と直通なんていつもしてるし。
　そんなのわざわざテストしないわ、めんどくさい。
　ほら、最近、うちの誰かが異世界に行ったことってなかったでしょ？』
「ないなー。」
「記憶に無いですの。」
『だからよ。ここって放置してたら変なのが入り込むのよねー。』
「時々、塞がないままにしてるからですの。」
「今のとこ、へんなのは見かけないけどー？」
『それはね、シューティングなゲームしてるからよっ。安心して？』
「鳴、マスターのスコアって……。」
「き、気のせいですの。もしくは、気の迷いですの。」
『かぁーこぉー、ちゅーんーたぁー？
　……こほん。ま、いいわ。今回は少しだけ【使ってる】から。
　そう。危険なのはちょっとだけ、ちょっとだけなんだからねっ♪
　変なこと言うと上がるけど。希望者はー？』
「マスター、たのしそうだなー。」
「……相変わらずですの。そして、かーこは呑気ですの。」
『いないの？ちぇっ。……ま、それはそれとして。
　向こうのことをちょっと話しておきましょうか。』


（※めんどくさくない程度の説明が行われております。しばらくお待ち下さい。）


『以上よ。せんせーしつもーんっ！』
「逆ですの。いくつか尋ねたいですの。
　それで、向こうではエンブリオを保護すれば良いですの？」
『それがねー……。』
「やっぱり？」
「知ってたですの。」
『今、ちょーっとだけ、ごたごたしてるみたいなのよね。
　だから、ついでに手伝っておくといいわ。
　そのほうがいいでしょ、いろいろと。』
「もちつもたれつですの。」
「だなー。」
『基本的な条件はいつもの。
　あとは……、そうね。あの話を読んでたのよね？
　【自称魔王】とか【自称勇者】とか、そういうのにはならないで。』
「りょーかい。じゃ、僕はいつものお使いと同じだなー。」
「大丈夫ですの。かーこにはボクがついてますの。」
『ふふっ、約束、したわよ？』
「「はい、マスター」」
『そろそろ着くわね。
　気を付けていってらっしゃい。
　まずは、うるさいのとむっさいのがいるはずだから。
　あとは……、なんとなくいい感じでっ！』
「おー、いってくる。まってろ。」
「行ってきますですの。」
『そうそう、ちゅんた。あっちも、期待してるわねー？』
「うるさいですの！もう着いたから切るですの！！」



————————— SOUND ONLY　END —————————



マスターへの報告とは別に、記憶に残しておこう。
これは、ボクたちの物語。新たな始まりとなるかもしれない物語。



「話をまとめるですの。
　ボクたちの目的は————

・一揆を成すものとして参加すること。
　そういうものと協力してもいい。
　ただし。試合を除き、無実の協力者を害してはならない。
・必要なものは現地調達で。入手したものは何であれ自由に使える。
・エンブリオの保護。1種類ずつ。どれを集めるかはおまかせ。
　余裕があれば鍛錬しておくこと。
・マスターが助ける状況は。
　その世界から移動しなければならないとき。
　過度の被害を受けそうになったとき。
　帰還するとき。
　なお、通信や気紛れはこれに含まれない。

　————こうですの。
　かーこ、分かった？」
「んー、なんとなく？」

かーこはそう答えたけど。
ボクは知ってる。分かってないことくらい。
今のかーこでは分からないんだってことくらい。
それでも、ボクがいれば。

「鳴ー、うるさいのとむっさいのって、あれかー？」
「そうね、他にはいないの。かーこ、よろしくね。」
「……おー？あー、りょーかい。」

こういうことは言わなくても理解するんだから。
今は、これでいいよね。


そうして。
話の流れで腕試しをすることになったんだけど。
だけどね、これだけはマスターに言っておかないといけないよね。
回線繋いで、これでよし。
かーこの代わりに、言わなくちゃ。

「マスター。マスター、応答するですの。」
『ただいま、とっても素敵なマスターはおやつをもぐもぐしております。
　用事のあるちゅんたは、美味なる果物を持って……ってそっか。無理か。
　あ、これおいしーっ。おかわりは？あるの？ないの？』
「マスター！話を聞くですの！」
「まあまあ、おちついて。な？」
「わ、わかってるわ、ですの。」

こんなのはいつものこと。落ち着いて、落ち着いて。

「あのエンブリオ、まったく役に立たないですの。」
『へ？あー、あの子？もちろん、使えないわよ？』
「「えっ？」」

思わず、かーこと顔を見合わせたりして。

『現時点での戦闘能力で言えば、うちの子最弱だし？
　もちろん、そっちでの貴方たちを含めてね。』
「……ひとつ、質問ですの。
　異世界でも【戦える】ようにこの子を貸し出したわけではない、ですの？」

違ってたらいいな、なんて思いながら。尋ねたのだけれど。

『残念だけど、違うわ。
　だってその子、家具として使おうと思っていたから。
　試してみたんでしょ？痺れるのとか痛気持ちーのとかっ。』
「そんな感じだったなー。」

こんな答えが返ってくるなんて……。
この先ボクたちはどうすればいいの？
ねえ、誰か教えて。

『かえったばかりのそのヒナは、すっごく弱っちいかもしれないけれど。
　他のそれらと比べて、絶望するほどかもしれないけれど。
　生まれてすぐに歩けるようになるものばかりじゃないから。
　……でもね。そのうち化けるかもしれないわよ？
　先のことなんて判らないんだから。
　ちゅんたにも、信じて待ってるものがあるでしょ？それと同じこと。
　おおっ、いいこと言ったらおかわりきた！
　プレゼント送っておいたから、どれかひとつ選んでねー。じゃっ！』

そんなことを考えていたら、いつの間にか通信が途切れてて。

「……あっ、ちょっと待つですの！」
「きれてるみたいだなー。」

信じて待ってるもの、か。
今更だよね、そんなの。
でもね。待つのは大変なんだよ、とっても。
そんなこと、言わなくても知ってるよね。マスター。
きっと、ボクよりもずっと。

「プレゼントって、どれにする？」
「何があるの？錬金術師の心得と、作製師の心得と、あとは……。」
「ヨメの心得？何だこれ。」
「かーこ！そっちにあるのから選ぶですの！今すぐに！」
「じゃ、作製でー。」

マスター、今回はいたずらが過ぎると思うの。
理由なんて分かってるけど。
それにしても、やっぱり作製を選ぶんだね。
もしかして覚えているのかな？
……ううん、なんとなく、だよね。

「よーし、川にでも行ってみるかー。」
「そうね、悪くないと思うの。
　そこで何か良さそうなものが見つかるといいね。
　かーこ、行くわよ。」
「おー！」


もう少し。もう少しだけだからね。
今は、どうか、まだ。