王城前での腕試しを終えてから数刻。

シュウスケとフィリアスは城門をくぐり、広庭の中を進んでいた。

　シュウスケは、先程ルリアンナ達から受け取った紅い花を取り出す。

　エンブリオと契約するために必要な花、ネクター。
この世界では非常に大切なものであり、今回の一揆も王がネクターを独占し始めた事が原因だという。

　そう言って、シュウスケは腰に装着しているベルト…フェアリードライバーに触れる。


　様々な妖精界を巡ってきた中で出会った妖精達…彼らは、それぞれ司っている「属性」がある。
例えばフィリアスのように「風」を司る妖精や、「火」や「水」、「土」と言った四大属性と呼ばれるものを始め、
「音」や「方向」、「夜明け」といったものを司る物もいる。
フェアリードライバーは、こういった妖精達の司る属性の魔力を借りるためのものであるとも言えるのだ。

　そう言ってシュウスケは足元を見下ろす。地面には大小様々な靴跡が残っているのが見えた。

　張り切って前を飛んでいくフィリーを追いかけ、シュウスケも足を速める。

　




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　穏やかな風が、広庭の中を吹き抜けて行った。

ぽつり、彼の近くでそうつぶやいた人間がいた。
１８歳程度の、黒いコートを羽織った少女。
どうやら彼の腰につけられたベルトに興味を抱いたらしく。

ねえねえ、と後ろから声を掛けて。
ベルトを右手で指さしながら、問いかける。

にこにこと笑みを浮かべる彼女。
敵意は見られない。純粋な興味から話しかけたらしい。

どこか人気の少ない場所、黒装束に仮面の男が貴方の前に音もなく姿を現す。

こころなしか急かすような口調で、男は貴方に問いかけてきた。

　白い服にマントの少年がそちらを見つめていた。
　視線に気付くと頭を下げてみせた。
　傍目には両手両足の拘束でまともに動けるようには見えない。

　罵声と溜息といろんなものが彼の方から聞こえた。
　……気のせいか彼の口は動いていないように見えたのだが。

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！

フェアリードライバーのバックル部分を展開すると、電子音と共に穏やかな光を放ち始めた。

フィリアスから宝玉を受けとり、バックル部分にセットする。
シュウスケの全身に強化骨格が瞬時に転送され、戦闘準備が完了した！